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評決のandardのレビュー・感想・評価

評決(2019年製作の映画)
4.0
東京フィルメックス
夫の暴力に耐えかねた女性が夫を刑事告訴する話。

カメラは雑に動いているように見えて、要所要所で重要なものをしっかりと抑えており、綿密に計算されているものと思われる。
家族写真の夫の部分に貼られたシール。

警察に駆け込んでから、告訴、裁判とそれぞれのプロセスのディテールを細かく描かれていて、純粋に興味深い。
日常の様子も細かく、そこで暮らすことが想像できる。
おでこの十字架とかギョッとする。(灰の水曜日というらしい)
これはプロデュースしているブリランテ・メンドーサのアルファと似た印象。

細かく描かれる役所の手続きは改善の余地は多々ありそうだけど、とりあえず現状はそれで回ってるし誰も変えようとしないから、しばらくこのまま変わらないんだろうな、と思う。
それにしてもペーパーワークの多さ!
終わった裁判の書類を棚も何もない部屋に無造作に積み上げるラストシーンも、うわ〜後から探すの大変そうだなあ、という印象で終わる。

俳優陣は職業俳優のようだけど、普通にフィリピンの街中に居そうな感じが出ていて素晴らしい。子供役の女の子もうまい。
怪我のメイクも、とても嫌な気持ちにさせる生々しさがあってとても上手。

傷口は清潔に、と言われてたけど、ちゃんと守れるのか?と思ってしまう。

天気の使い方も上手い。よりによって雨かよ、とか、えっ朝になってるじゃん、とか、しかも子供抱っこしたままで、とか本当に辛い気持ちになる。

結局一番得したのは途中で降りた弁護士、という点も格差の一つの側面として考えさせられる。

それにしても長くて、途中でいつまで続くのか心配になるし夜に見たので眠い。

ところで、映画を見る限り、裁判官一人で判決内容を決めていて、陪審制でも合議制でもなさそうだけど、それは「評決」とは言わないのではないだろうか。
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