うえびん

戦争と女の顔のうえびんのレビュー・感想・評価

戦争と女の顔(2019年製作の映画)
3.9
この世界から戦争を無くすこと

2019年 ロシア作品

1945年レニングラード
(現サンクトペテルブルク)

第二次世界大戦の独ソ戦の中心地
市民の死者は100万人以上
主な死因は餓死と言われている

舞台は傷病軍人が収容された病院
そこで働く看護師のイーヤ
深刻なPTSDの症状を抱えている

ある日、戦地から帰還した
イーヤの戦友マーシャ
彼女もまた後遺症や戦傷を抱えている

イーヤとマーシャ
廃墟の中
自分たちの生活を復興させるため
壊れた心に希望の火を灯すため
切ない闘いの日々が克明に描かれる

帰還した傷病兵
彼らに称賛の言葉を贈る
ソビエト共産党幹部
偉大な指導者の名の下に

党幹部とは対象的な
市民の貧しい暮らし
フルーツ、塩、マッチも手に入らず
公衆浴場も滅多に利用できない

赤、緑、白
色の使い分け
統一感のある映像が美しい
過酷な暮らしを観続ける苦しさが和らぐ

そこに
そこはかとなく希望が見えてくる

医師にとっての希望
傷病兵とその家族にとっての希望
政権党幹部とその家族にとっての希望
心に傷を負った女性たちにとっての希望
将来生まれてくる子どもにとっての希望

希望を持ちにくい
過酷な時代
極限の境遇に置かれた人びと
皆にとって希望になり得るものは何か

人生に絶望したステパンの言葉
「戦争のせいだ」
この対極にそれはあるのだろう

この世界から戦争を無くすこと
うえびん

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