真田ピロシキ

戦争と女の顔の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

戦争と女の顔(2019年製作の映画)
2.5
現在、映画を見る集中力と意欲がないが、完全に趣味と化した二次創作小説執筆で2作目は元ロシア軍人女が主人公で参考資料として『戦争は女の顔をしていない』を購読。その流れで映画も見たいと思い、気が向かないながらも見始めた。

原作ではなく原案なのは分かっていたが、この映画はあの本に描かれたことを見出せてるとは思えない。本で印象に残ったのは従軍した若き女兵士が軍にいた時は仲間の男性から深い愛を捧げられていたのに、戦争が終わると妻にはしたくないと腫れ物のように避けられ、女性からは淫売のように中傷されたことだった。女漁りをしていた男たちが軍人女はヤリやすいとナンパするところにはそれがあるかもしれないが、その男と懇ろになりPTSDの発作で預けていた子供を死なせたノッポの女に復讐めいた気持ちを交えて中年男との子を産ませようとする様子は如何にもフィクション的。それでいてレズビアン的な繋がりもあって。必要性がなきゃダメなんて言うはずないが、重ね重ね本に描かれてたことが見えない。それなら完全オリジナル脚本として発表してくれないと受け止め方に困る。

本の最終章にはこう書かれていた。「伝えなければ。世界のどこかにあたしたちの悲鳴が残されなければ。あたしたちの泣き叫ぶ声が。」長い歳月と圧力に耐えながら膨大なインタビューの末に生の戦争と女性を描き切っていたのに、それを安直な物語へ変換するのは方向性は反対でもタイムスリップした女子高生が特攻隊員と恋に落ちる映画とそんな変わらないのではないか。気が乗らなくても頑張ってトットちゃん見に行った方が良かった。