りっく

戦争と女の顔のりっくのレビュー・感想・評価

戦争と女の顔(2019年製作の映画)
4.1
戦争の描写を直接見せることなく、ある姉妹のミニマムな物語から、戦争が人間の心身に刻み込まれ蝕んていく生々しさを人間の生理と映画的な技巧を駆使して描いてみせる。

ペンキや衣装の印象的な緑と赤の使い方、随所で挿入される戦争の後遺症を思わせるノイズ音、前半で姉から預かった子供を殺めてしまう場面と姉にのしかかる後半の場面での呼応構図。視覚、聴覚、カメラワークなど巧みに計算され尽くした数々がその傷跡の生々しさと深さを否応なく感じさせる。

子供への罪悪感によって姉妹が溶け合いひとつになってしまうのではないかという生理的・倫理的な距離感の危うさ、それからひとりの女性として各々が人生を選択し、そのうえでともに人生を歩もうとする過程がスリリングで目が離せない。
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