はない

だってしょうがないじゃないのはないのレビュー・感想・評価

4.7
神奈川県主催のイベントで鑑賞。
2020年に三角絞めさんのレビューを読んで以来機会を伺っていた本作だが観てよかった。
映画はすごい。いつもは他人事として処理してしまう「ちょっと違う人」を身近な人にして、自分ごとにさせてしまう。

自分も発達障害と診断され、幼い頃から仮面ライダーが好きなのでまことさんの戸棚に知ってるフィギュアが飾られていたことから超没入。
「だってしょうがないじゃない」というタイトルは複雑。鑑賞前は「ケアが必要なのは仕方ないじゃない」っていう当事者の明るい言葉(こんな夜更けにバナナかよ、的なイメージだった?)だと思ってたけど、実際には自分がこういう立場だしやりたいこともやり通せないけどしょうがないよねっていう諦めの言葉だったので…監督は諦念に次のステップに踏み出す希望を感じるとコメントされていたのでやっぱり明るい言葉かもしれない。

まことさんが映画撮影後5年経った今も、ケアを受けながらあの家で生活しデイケアに通って楽しく過ごしている、とトークショーで知れたことが嬉しい。まことさんが65歳になって高齢者の括りに入って、デイケアの中で若手で自信を持てているのもまことさんが生き生きしてる理由にあると思う。「できないひと」として身を縮こまらせてよくなった、人との交流が生まれた。現行仮面ライダーガッチャードもチェックされているとのこと。嬉しい。

気になったのは、というか怖くなったのは障害者の5080問題。ボランティアとか介護職とかケアを担うつもりの人間は思ってるより多くいるかもしれないけど、当事者とそれらを結びつけるのは親族の役割なのかとモヤモヤした。

あとやっぱり、まことさんの規範から外れた行動にクレームつける隣人とかもいて。お母様亡き後にまことさんのケアを積極的に引き受けていた叔母様の言葉が時々チクチクしていたり。そういう点で「結局普通の人じゃないと思われてる」自覚みたいなのすごくよくわかる。監督が言ったみたいに、「普通」に洗脳されてるかもしれない。私自身ももっと自分の人生やメディアで規定されてる普通の人生なんかと違う人生に対して想像力豊かでありたい。まことさんが他人としてそばにいても受け入れられる人間でありたいと思った。
はない

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