クミコ

だってしょうがないじゃないのクミコのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

東中野で用を済ませ久しぶりにポレポレで映画でもと、本当にふらっと監督さんの名前も含めなんの予備知識もないままみた『だってしょうがないじゃない』、とってもよかった。しみた。

広汎性発達障害と診断されている、一人暮らしのまことさん。自分に関し何か方向を決めなければならない場面になると、周囲の意見に異を唱えず「だってしょうがない」と繰り返すまことさん。みんな、まことさんによかれと思い言ったりやったりしてることだということを、まことさんはわかっているから。
きっとこれまで数多くのままならない出来事を、そうやって自分に言い聞かせてやり過ごしてきたんだろうな。そう思うと切なかった。
そのまことさんがただ一度だけはっきりとNOの意思表示をしたのが、庭の桜の木の伐採に対してだった。
なのに、なんでガシガシ切っちゃうんだよ植木屋。しかも切り口が雑なんだよ植木屋…と、みているこっちが涙。

お隣さんから苦情が出てもビニール袋を飛ばしてしまうのは、そのフワフワ飛んでいくさまが面白いからとうつむく姿に、これはもう、その感性は誰も叱れないわと思ったり、4ケ連結のチチヤスヨーグルトのしまい方や洋服のたたみ方、歯磨きの仕方やお風呂の入り方(一週間分、いやそれ以上きれいにしていた…!)などなど、まことさんのこだわり、もとい、極めて真剣に日常生活を送る様子に、なんだか目が離せないのだ。

笑える場面もたくさんあるし、多くの人に勧めたくなる映画。なんせ、本日11月2日が公開初日だそうですので。
ちなみにわたしのツボは心霊写真。あれはどう考えても座敷童でしょう。

上映後に監督の坪田義史氏は、これは小さな映画かもしれないけれどと謙遜されておられましたが、その「小さな」映画が残す余韻や温度は、ご自身が思うよりずっと遠くまで広がって飛んでいくのではないでしょうか。やわらかい風に運ばれていく紙飛行機のようにさ。

まことさんの人生は続いていく。まことさんのこれからに、たくさんの幸せが訪れますようにと願いながらこのレヴューを書いている
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