さよちゃん

だってしょうがないじゃないのさよちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

まことさんが持つ配置へのこだわり。
外からはこだわりと呼ばれるけど本人はこだわりじゃないという
几帳面に並べられた綺麗なフィギュア、棚はフィギュアが占領していて、リフォーム後の新しい棚にも綺麗に並べられる
石鹸の位置の確認4回、ただパッと置けない
ベッドの上に並べられる脱いだ服、パサっと置くのにも何度もやり直す 外へ出かける前に何度も何かを確認する 何度も振り返る
毎日の習慣への執着。お風呂はこの曜日って決まっちゃってるから、できない。夏も冬も変えない。
お釣りもすぐに計算できない。合ってることを確認して、あとでまた確認する。それで安心する。

障害を持つ人ってハンデがあっても心が綺麗とかピュアとかいうけど、この映画はただリアルで、綺麗事で終わらない感じが良かった。
まことさんは年齢の割にあまりにもピュアだ。
住宅展示場のミニ新幹線に乗りたい、新しいスニーカーが欲しい、バーベキューをしてみたい。

隣の家の人から見たら知的障害のある中年男性が夜中にゴミを荒らす、次にやったら警察にいくこと
傾聴ボランティアの方への語りでは、俺は頭がおかしいから何か分かんないけどやっちゃう
支援の方への語りでは、風に舞う白いビニール袋が綺麗だからやっちゃうと
その時にアニメで流れた夜のシーンが綺麗で、まことさんの見えたものがなんとなくわかる

切られる桜の木、
根元から切ると伝えても理解できない
太いから無理とか切らなくてもいいとか
まことさんの意思や理解と、現実の進むスピードには乖離があって、どんどん変わる庭、建てられる外壁とフェンス、畳が捨てられてフローリングになってもスリッパを履く習慣はつかない

一冊だけのエロ本
それすら叔母に嫌悪される
性欲もなさそうな純粋さに反して女子高生のパンチラ本
でもきっとAVも見ない風俗も行かない 生身の女性との関わりもない

傾聴ボランティアの人との年賀状の話をしているところが良かった
まことさんはただ今年は年賀状がこなかったという
関西弁の元気な女性はそれでまことさんの意思を理解できる
年賀状の宛名を書かないでだしちゃったの、そしたら戻ってきてね、まあいっか、ってださなかったの。そしたらそう言われてね…そんな風に私のこと思ってくれてるって思わなかったから
まことさんの気持ちは他者に分かりづらいけど、ちゃんと人のことを想ってる

気になったのは息子と四十年、二人きりで暮らした母親のこと。
自分の家族にも息子の障害のことを伝えないで死んじゃった。
一人で全部を抱えていた孤独さについて思った。
さよちゃん

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