みーちゃん

聖なる犯罪者のみーちゃんのレビュー・感想・評価

聖なる犯罪者(2019年製作の映画)
3.0
あらすじ欄に書いてある事との重複は避けるが、ダニエルを演じた主演のバルトシュ・ビィエレニアがとても良かった。

彼の信心深さや司祭に対する純粋な憧れと、対極にあるドラッグやアルコールなどの快楽が、ダニエルの中では同居しているのだが、「やめたいのに、やめられない」みたいな、中途半端な葛藤の描写がないのが潔い。

だから、客観的には二面性に感じる、相反する行為が、ダニエルの中では、悪びれることなく、矛盾なく、自然な形で両立しているように見えるのだ。これは、バルトシュ・ビィエレニアの表現力の成せる技だと思う。自分は、前科があるから神学校に入ることは出来ない。だから、どんなに望んでも絶対に司祭にはなれない。と、序盤で宣告された時の表情も、複雑で、胸を打たれた。

ストーリーとしては、はじめ半信半疑だった村人達に、次第に受け入れられ、最終的に前の司祭より慕われるのは興味深い。

でも、観終わった時、心揺さぶられる感動にまでは至らなかった。その理由は、司祭として過ごしたエピソードの描き方にあると思う。

最初の仕事は、12歳の息子が喫煙している母親の懺悔で、この演出は上手くて、かなり期待が高まった。若者達との距離の縮め方や、町長との対立など、周辺話もおもしろい。

一方、エピソードの中心に据えた、1年前の交通事故を巡る描き方が、残念ながら今一つ弱かった。遺族達とのシーンの数々も骨細で、説得力と魅力に欠けるように感じた。