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長くつ下ピッピの冒険物語のくりふのレビュー・感想・評価

長くつ下ピッピの冒険物語(1987年製作の映画)
3.0
【天然泥酔少女】

Netflixにて。この原作、知ってはいたが縁がなかった。

縁あったのは『パンダコパンダ』の方。ピッピのアニメ化企画が頓挫したので、設定が流用されたらしく、振り返ればミミちゃんの見た目や、フリーダムな毎日はピッピ風だわ。

また、後で知ったが映画化の経緯がオモロ。原作者はアメリカでの映画化に乗り気でなかったが、製作者の“アメリカの子供達に暴力でなく優しさを見せたい”との主張に賛同、許諾したが、完成した映画を見ると“とてもひどいもの”だったという…。

いや、わかりますわ、そのキモチ。…確かにひどい。

今なら史料的な価値やオモシロサはあるけど、コレ、子供向けバイオレンス映画じゃん。

ピッピは天然暴走少女だが、作り手がモラルを熟考した上で彼女に壊させる…という痕跡を感じない。No脳に暴れるばかりで、ビョーキか?とさえ思ってしまう。

演じたタミー・エリンも、ナニをやらされてるか、わからず動いているように見える。…つーかこの人、しばらく前に起きたらしいセックステープ騒動の方が気になる!www

何だか日本の飲み屋でよくある、正体なくしてハイになる、あの醜悪さに貫かれた世界観。

単純なトコでは、食べ物投げ捨てまつりはダメだろ。何テイク撮ったのやら、どんだけ食料を無駄に?撮影が偽物でも子供はわからない。大人のパイ投げ感覚で撮ってるのでは?

ギスギスした世の中で、子供らしさを開放しよう!という方向性はわかるけど、ただ本能のままに、とか、ただ禁忌を破れ、とかでは、ただの退化じゃん。野良犬と変わらない。

本作のピッピだと、おしっこ我慢できなくなったら、道の真ん中でやりそう…もしや大も!?

で、破天荒な言動から大人に誤解されていたピッピが、ある勇気ある行動から、実は心の優しい子供だとわかって皆は…てな展開だが、まさに“吊り橋効果”でごまかしちゃっている。

99%の破壊行動と1%の優しさがピッピでしょ。街の皆は今後、マトモに付き合えるのか?一日中酔って暴れて、静かなのは寝ているときだけ、みたいなオッサンと同じだと思うよ。

子供(と大人)を開放に導こうとする『メリー・ポピンズ』を少し思い出すけど、あそこにはナニー(ガヴァナス?)が居て、飴と鞭があったわけで。

他人事として、バイオレンス映画として許せれば、無責任に囃し立てて愉しめるカナ。

あ、飛び関連のアクションはちょっと、キモチよかったです。

名前で思い出したが、ケン・アナキンって『史上最大の作戦』などの、イギリスのベテラン監督ですね。本作が公開映画としては遺作らしいが、監督として適していたのだろうか?

<2023.6.6記>
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