ごろちん

ふたつのシルエットのごろちんのレビュー・感想・評価

ふたつのシルエット(2020年製作の映画)
4.2
別れた男女が再会して当時の話をする、ただそれだけなのに時間の概念について考えさせられる。ノーランの作品が物理学ならこの作品は心理学的なアプローチで。

時間は万物に対して忠実。髪は1ヶ月で約1cm伸びるし、食べ物の賞味期限も細かく決まっている。電化製品も大体10年で壊れる(意図的?)

でも思い出はちょっと違う。時間によって色褪せてしまう思い出もあれば、くっきりと覚えている思い出があるように。別れて7年という時の経過はお互いの気持ちに差が出てくる。「今」と「過去」の二人が交差して会話を交わす。すると互いの本音とともに時間の公平さが際だってくる。

この作品は音楽が重要な部分を占めていて、過去一緒に聴いた曲は時を超えて当時抱いていた気持ちを思い出させる。

37分と短い映画ながらもショットの一つ一つが丁寧。たぶん、竹馬監督は言葉では言い表せない感情を映像化することに腐心しているんだと思う。『今、僕は』、『蜃気楼の舟』とシチュエーションはそれぞれ異なるけど、この映画の曇り空のような心理状態を描写しているのは同じ。観念的なものを映画に収めようとするチャレンジングな竹馬監督は本当に凄い。これからもどんな曇り空を観せてくれるのか楽しみ。


監督がインスパイアされた曲↓
jan&naomi「DAB♭」
https://youtu.be/UMGqCFdpans
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