幽斎

ヘルウィンの幽斎のレビュー・感想・評価

ヘルウィン(2019年製作の映画)
3.8
ハロウィンの日、ベントンの町でパンプキンマスクをしたパトリック、あだ名トリックがナイフで高校生を刺す事件が起きる。トリックの行方は分からないまま、ハロウィンの日に似た事件が起こり、トリックの関与が疑われた。そして、最初の事件から4年後、ベントンに再びトリックが。Halloween Kills公開記念ではなく原題「Trick」キャラクターの名前。

ハロウィンの日に人を殺し廻る。オリジナル「ハロウィン」そっくり、スラッシャーと言うジャンルも同じ、私人のローリーを中心としたストロード家が対峙するが、此方は捜査官デンバーと保安官ジェーンとの戦い。本作が他のスラッシャーと違うのは、一本道なストーリー展開にアレンジが施され、数年に渡り違う場所で人を殺す、それをFBIが追うプロットで、サイコ・スリラー風味も加わり、寧ろ邦題とジャケ写で損してる。

トリックは既存のスラッシャーと比べ、ルックスが意外とスタイリッシュで、行動もアクティブ且つ軽妙、何ならオシャレ感すら有る。本家Michael Myersよりも、アグレッシブでサービス精神旺盛。殺戮トリックや仕掛けのステージは私の生涯1位作品「SAW」っぽく感じる。神出鬼没なジャンプスケアは、単調に為り易い展開を、飽きずに見せる演出も意外と良い。

糞ホラーに違いないが、論調が何となく褒めてるので、監督は誰かと思ったら、ナルホドね。Patrick Lussier監督は長年編集、エディターとして一線級の作品を数多く手掛け、本作の様に自分で温めた脚本を元に監督するスタイル。私のお気に入り「ブラッディ・バレンタイン 3D」とか「ドライブ・アングリー 3D」「ターミネーター 新起動ジェニシス」等、テンポの良い展開が持ち味。スラッシャーにサスペンスにお化け屋敷にオカルトと、トッピングも豊富、設定は面白いけど脚本に深みが欠ける点を演出で補うので、そんなに酷く為らない。

国宝級「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」が流されるが、これも重要な伏線で、唐突なドンデン返しも含め、途中で寝オチを許さない。オリジナル「ハロウィン」が秀逸なのは、何時ものバカ騒ぎする若者が殺される、のではなく一家総出で対決する、視野の狭い作品だからこそ家族にフォーカスが絞られ、面白く成る。本作も、ターゲットは市民ではなく警察官を狙ってアタックするので、他の作品には無いフレッシュさえ有る。

肝心の殺人鬼をもう少し深堀りすれば、続編すらイケるキャラクターとか、殺人事件で見逃せない動機についても整合性が無く、色々惜しい点も多い。だが「惜しい」と思わせるのは、基本プロットが出来てるから言える。B級スラッシャーとは一味違った構成に惹かれる点も無視できない。捜査官が「俺は闇の力を感じる。奴は闇の力を体現した」とオカルトまで引き寄せるサービス、死んでも死なないBoogeymanすら感じる。

ラストは後味の悪さが残る、ホラーは基本的にバッドエンドなので、ソレが好物の方には面白いかも。驚愕のオチも「アリか、ナシか?」と聞かれれば、確実にナシですが、低予算で凡庸に陥り易いジャンルで、スクランブルを見せる展開は、スリラー専門の私も一定の理解を示す、と言えば褒め過ぎか。アメリカのレビューは「恐ろしく支離滅裂」と散々だが、私はソウは思わない。ジャンルレス・ホラーで好き嫌いが分かれそうだが、モノ好きな方は観て損はない、かも。

本家「Halloween Kills」が待ちきれない貴方、アペタイザーの一品として悪くない?。
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