せら

映像研には手を出すな!のせらのレビュー・感想・評価

映像研には手を出すな!(2020年製作の映画)
3.9
良作。
齋藤飛鳥さんが素晴らしい。最初気づかなかった。


大・生徒会-映像研-ロボ研は、現実-リアリティ-幻想の三項関係を結んでいて、映像研が両者のあいだのひずみとして物語を動かしていく。


この作品の特徴は、教養小説的ではあるけどよくあるセカイ系ではなく、主人公の3人は物語の展開に沿って自分たちの問題を乗り越えていくけれども、学校の支配体制のような「世界」は最後まで何ひとつ変わることがない、ということだろう。


とはいえ、映像研はロボ研や音響部など、目的を達するために他の弱小サークルと緩やかに連合していく様は、それぞれ孤立して存在してあるように見える他のサークル集団とはやはり異質である。


こうした開かれた共同体を築くことは、いまや現実世界でもなかなか難しいが、権力を握っているはずの大・生徒会の混乱と対比してみても、この作品で映像研はある種のユートピアとして描かれているとも言える。


一点だけ難があるとすれば、気象研は、すべてを俯瞰するようなストーリーテラーの役割を与えられているが、作品構造を過度に複雑にしている上に、デウスエクス・マキナの役目も果たしていて、これは不要だったんじゃないか、と思った。
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