いはん

シャドウプレイのいはんのレビュー・感想・評価

シャドウプレイ(2018年製作の映画)
4.2
ロウイエの映画を観なければならないと思ったのは、どこかで目にした彼のインタビューのお陰である。”Censorship makes Chinese local audience a second-tier audience. A second rate audience”と述べていた彼の映画はきっと観る価値があるように感じた。どんなモノであれ、私たちには自分で感じ、咀嚼し、取り込む権利があるのだ。

この映画だけに関していうと、もうドンピシャで好みだった。多大な情報が、揺れるカメラワークと共に一気に提供される。時代を映すカメラは、いつの間にか時代に翻弄される人々に向けられていた。ヤン警官という灯火は、私たちを深淵へと導く。歪んだ関係と歪んだ愛、歪んだ道徳観と歪んだ社会。その中で唯一まともなアユンが、全ての業を背負わされ、犠牲にされる。その犠牲の上にさらに歪んだ関係が、崩れるか崩れないかの狭間で成り立つ。三人がアユンを処理し、抱き合うシーンを見た時は、なんつー映画を撮るんだとゾワっとした。

現実は、きっとこれよりも惨い。別に殺人がとか、汚職だとかの話ではなく、不健全な関係性と社会の話。既に歪んだ関係の上に健全な関係が成り立たないのは当たり前であり、打開するために必要な事を分かっていても、容易に行動には向かえないし、向かったところで乗り越えなければいけない壁があまりにも高すぎる。それがきっと現実なのだ。
いはん

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