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辰巳のmasososoのレビュー・感想・評価

辰巳(2023年製作の映画)
3.5
冒頭の弟との掴み合いのシーンから受ける強いインパクト。
タイトルカットよりも前に差し込まれているこのシーンが作品のメッセージとして大事な柱になっている。

葵のあの生意気で自分勝手なキャラクターはどうあっても好きにはなれない。姉の死によって悲劇のヒロインに仕立てられてしまったけど、あの環境、遅かれ早かれ自分が原因で周囲に被害を撒き散らすようなタイプだ。
だから全く関係の無い辰巳が自分の立場を悪くしてまで葵を助けることが理解できなくて歯がゆい。一家の兄貴分が最後に葵に尋ねた通り。
その原因こそが前述の弟とのやり取りなんだろうね、辰巳の中のトラウマ、後悔。後藤のスクラップ場で葵を押さえつけた場面が弟とのそれとオーバーラップする。
弟を救えなかったことへの贖罪。

その場面はこの映画のポスターデザインにもなってる。力強くて訴えかけてくるような良いデザインだと思う。その印象的なポスターからも分かるようにどの場面もライティングが巧みで、ひとつひとつのカットに力を与えていたのがこの作品の一番優れていた点。
反面微妙だったのは人物の掘り下げ方。テンプレ的なキャラクターが多い。竜二はイカれてるけどチンピラの域を出ていない。ノワールはやっぱり悪役に魅力がないとダメだよな、個性を感じなかった。台詞もテンプレートに当てはめるために喋らされてる感があって、キャラクター達が生きていないなと感じた。
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