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辰巳のKUBOのレビュー・感想・評価

辰巳(2023年製作の映画)
4.5
「森田想」

素晴らしい俳優になった。すごい熱演だった!

2017年の東京国際映画祭、松居大悟の『アイスと雨音』で見つけたフレッシュな少女が、こんな全ての情念を叩きつけるような役柄を演じ切るとは、恐れ入った。

安藤サクラの『百円の恋』とか、岸井ゆきの
『ケイコ 目を澄ませて』とか、それまでバイプレイヤーだった俳優が一気に注目を浴びる作品があるが、森田想にとって、この『辰巳』がそういう作品になるに違いない。

ジャンル的には監督も自認しているようにジャパニーズ『レオン』。

死体の解体処理を生業にする「辰巳」(遠藤雄弥)と、姉を殺され復讐を誓う少女「葵」(森田想)のノワール・バディムービーだ。

主演の遠藤雄弥は『ONODA』で津田寛治演じる小野田さんの若い頃を演じていた時も「すごい!」と思って注目していた俳優さんだが、

本作でも「辰巳」以外はテンション高すぎるチンピラが多い中、ひとり抑えた演技が素晴らしく、森田想演じる「葵」に対する「面倒見きれねーや」から「放っておけない」に至るまでの枯れた優しさがいいし、

なんと言っても2人のバディ感が最高なんだ。

常に命のやり取りを予感するヒリヒリした緊張感と、それを上回る「葵」の突破力! 最後まで誰がどうなるかわからない展開に痺れた。

ただ、ラスボス「竜二」を演じている倉本朋幸さん、本作が映画初出演の本業は舞台演出家ということだが、申し訳ないがチンピラ感が強くて、それほどの威圧感を感じない。「国岡」さんがいたら一発でやられそう、なんて思ってたら、チョイ役で伊能昌幸さんが出てるじゃないの! もったいないな〜!(阪元裕吾ファンのつぶやき(笑))

評判が良いので見に行ってみたが、『辰巳』素晴らしかった! 牙が抜けたようなメジャー作品が多い中、インディーズ映画が元気だ。テレビに出てるような俳優だけが俳優じゃない。

『辰巳』、映画ファンを唸らせる傑作だ。
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