カタパルトスープレックス

辰巳のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

辰巳(2023年製作の映画)
4.5
小路紘史監督のノワール作品です。「優しい殺し屋」ならぬ「優しい解体屋」の話。どことなく『レオン』を思い起こさせる。日本でもこんな作品が作れるんだとうれしい驚き。

まず、一番印象に残っていること。ロケハン能力が優れているのか、よくこんな場所を見つけたなと感心する風景。ドローンを使っているのか、日本ではないような広々とした景色。素直に「うまいなあ」と思いました。

辰巳(遠藤雄弥)はヤクザの構成員で解体屋。死体を見つからないようにバラすのが仕事。辰巳が所属するヤクザで麻薬売買の売上をだれかが抜いていることがわかる。そのいざこざに巻き込まれる姉妹。辰巳は妹の葵(森田想)を匿うことになってしまうのだが……という話です。辰巳は仁義を守りながら葵もなんとかしようとするのだけれど、葵がすぐに暴走してしまう。もうねえ、いますよ、こういう人。しょうがない。そして、このハラハラ感がよい。

登場人物も一人一人ちゃんとキャラクター造形ができている。主人公の辰巳とヒロインの葵はもちろんのこと、わきを固める俳優たちもよい。兄貴役の佐藤五郎も絶妙だし、ヴィラン役である竜二の倉本朋幸も演出家とは思えない怪演ぶり。

テーマは「なぜ人は死ななければいけないのか」だと受け取りました。または「何のために人は生きるのか」でしょうか。なぜ生きるのか、なぜ死ぬのか。その答えは見つかるのか。とてもいい作品でした。