せっ

辰巳のせっのレビュー・感想・評価

辰巳(2023年製作の映画)
4.0

色んな汁が滴り落ちてますわ。

恋人を目の前で殺された辰巳が、その恋人の超暴れ馬な妹に手を焼きながらも復讐の手助けをしていく話。

男も女も全員汗も血も涙もヨダレも沢山垂れ流し、とにかく超至近距離で何度も登場人物達が対峙し合う。もはや人間同士というより、顔同士のぶつかり合いを見ていた気分だった。それも、そのぶつかり合いって何か揉めているけれど強い信念が必ずそこにある訳でなく、突発的な激情によってできた圧に見えたから。

ノワール要素も完璧だし、物語の構造もめっちゃしっかりしてて面白かった!辰巳の物語と連動して車が良い機能を担ってて、車の中での弟の絶命から始まり、そこから上手く動かなくなった車を葵が直し、その車で走り去っていくシーンで終わるのめっちゃ綺麗。

あと汁つながりも割と綺麗な構造で、最初の登場でヨダレ垂れ流して強烈なインパクトがあった竜二が絶命を悟った時涙を1滴流すの印象深いし、人の顔に唾を飛ばしまくってた葵は復讐を成し遂げる時自らの顔に血を吹きかけられる。因果応報というか、最初と最後でガラッと変わったそれぞれを汁で表してるのスゴイなと思った(笑)

ノワールだけどご都合主義な展開もあんま無く、中心人物の行動理由が大切な人の喪失から始まっていて、それらがこの映画のストーリーを動かしていくので、納得ができる。でもその喪失は、ある人物が少しでも金を貰ってやろうという小さなことから引き起こったこと。それって、クスリをチョロまかした自分の行動の重大さを全く理解していなかった葵に対する因果応報にも見えた。
せっ

せっ