すずきじみい

辰巳のすずきじみいのネタバレレビュー・内容・結末

辰巳(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

監督、脚本: 小路絋史

邦画には珍しい腹の座ったバイオレンス映画らしい、と聞いて、そのジャンル好きでもないのに、わざわざ遠出して映画館まで行ってきました。

ヤクザ達の話。
薬をガメって売った金をピンハネした奴を始末するとか、その金を横取りしようと陰で糸引く奴とか、下劣で醜い抗争の中で『レオン』と同じ話が進行します。
なので怖くて残酷なヤクザの世界を描きながらもエンタメっぽいです。
見終わった後で、散々見せられた荒廃した世界への痛々しさを感じないのです。

又、監督がキャスティングに徹底的にこだわって自主制作したという本作は、オーディションをしたかどうかは不明ですが、
有名な俳優が一人も出てないけど、『孤狼の血』や『アウトレイジ』に出てくる様なダンディなヤクザ達じゃないけど、ゆえに綺麗な作り物感が全くなく、お洒落じゃない怖い顔と性格の男達が血を流し、脂汗をかき、よだれを垂らし、生々しい殺し合いを見せてくれます。レオンとマチルダに当たる二人はハンサムと可愛い娘なので(ただし凶暴)それで画面がもってるって感じです。

殺すか殺されるかって乱闘してる時って、
脂汗が髪の生え際に滲んだりするんだろうなぁと‥‥
よく考えたら、アクション映画で、ものすごいアクションしてるのに汗一筋かいてないのは本当は不自然なんだなと気がついた。
エンタメ作品を作る以上、みっともない物を見せないのは仕方ないんだろう、
カッコいい二枚目が敵と戦ってる時、汗びっしょりだったら、カッコ良さも台無しだろうと思うが、ほぼ同時期に観たメジャー作品で、冴羽撩が飛んだり、走ったり蹴ったり、殴ったりの八面六臂のアクションしてるのに、額に汗一雫ついてないのが、すごく軽く安っぽく見えてしまった。
あと、最近のカッコいいアクション映画って、銃で撃たれた人が血出さないの、何かゲーム見てるみたいで、そこもどうも安っぽく感じちゃうのですね。

自分は隙のないカッコいいアクションより泥くさくて重みのあるのが好きなんだなと今頃気づいたりして。

日本映画が韓国映画やハリウッドに近づく為には、今の様な、国内である程度の興行収入があればいい、平均点以上のみんなに好かれる作品作ってればいいみたいな考え方じゃなく、もっとプロ意識持って、高い所を目指して欲しい。

その為に、有名な人を出しとけばいい、人気のある美男美女を出しとけばいいというオーディションしないキャスティング方式は、もう本当に改めるべきだと思う。
本作の小路絋史監督のキャスティングにこだわる心意気と、当然の結果として、魅力的な俳優達による上部だけじゃないノワール作品が日本映画に出現した事に拍手喝采したい。

お金持ちの製作者達には、こういう作品をメジャー作品じゃないからできる事などど、無関心で済まさずに意識改革してもらいたい。
色々文句言ってても、やっぱり日本映画よ頑張れ!と思ってるので。