mitz

辰巳のmitzのレビュー・感想・評価

辰巳(2023年製作の映画)
2.5
「ケンとカズ」で高い評価を受けた小路紘史監督による自主制作映画。暴力に暴力を上書きするアウトローな裏社会がリアルに描かれています。
登場人物は組織の末端の人物ばかり。その中で死体解体を生業とする主人公 辰巳 と殺された姉の復讐を誓う 葵 によるバディ系映画に分類されます。
漫画のように登場人物ひとりひとりのキャラクターが明確化され、それを出演者が見事に演じ切る。そしてそれをかなりの至近距離から撮ることで強調し「人物」を全面的に打ち出すように設計された作品です。とにかくキャスティングが素晴らしい。
これまでの任侠モノのような地域性(方言)はなし、エロもなし。また登場人物たちも典型的なチンピラスタイルを排除したスタイリッシュな出で立ちが目立ちます。そしてストーリー自体は「大切な人を亡くした者同志が傷つけ合う」古典的な形式を踏襲し、スケールも小さく分かり易い内容です。
その反面シンプルさが故に役者たちのフレッシュ感に対して物語そのものは新鮮さに欠けます。その上で(「レオン」のそれを始め)オマージュが強過ぎて既視感が拭えずもはやベタ。無味無臭なホモソーシャル描写、云わば上質なVシネマです。
それでも作り手の気概が伝わり、これから活躍が期待される役者たちのむき出しの演技を味わい尽くす点では良作です。
mitz

mitz