コブヘイ

辰巳のコブヘイのレビュー・感想・評価

辰巳(2023年製作の映画)
4.5
出てくる役者の顔がみんな良い!! 底辺に生きる人々がオラオラ生々しく魅力的に描いた、小さいけれど世界に出せるジャパニーズノワール!!

あまり観る気はなかったものの、またもラジオ番組で取扱になったので鑑賞。 小路監督作品は初めてでしたが、役者も美術もリッチで世界に誇れる『ヘルドッグス』とは真逆の方向ながら見事な完成度でこれまた世界に誇れるノワールの逸品でした。

死体処理を生業にしている主人公辰巳が組織内のゴタゴタに巻き込まれて元カノの妹を保護しながら血まみれになって奔走するギャング物でありロードムービーなお話。
タイトルでもある主役の辰巳を始め、出てくる演者が端役までとにかく良い顔ぞろい! 恥ずかしながらほとんど知らない人々でしたが、監督に手腕によって、それぞれのキャラクターがギラギラ輝くスターとして見えるマジックが発動。全ての個性的で魅力的な本作の人々は顔が映っているだけで正に絵になる力を見せつけておりました。
遠藤雄弥さん演じる辰巳のぐっとこらえる静けさ。
オーディションでキャラクターの性別を変えさせた森田想さん演じる、守られるヒロインかと思いきや感情と生意気さをまき散らす薫の破壊力。
そして、実は舞台演出家で映画初出演という蔵元朋幸さんが演じる、凶悪過ぎるオーラを放つ竜二。 実に複雑な感情を持っている佐藤五郎さん演じる兄貴などなど、シンプルなお話の中で人間関係が立場や感情によって複雑に絡み合うキャラクターのアッセンブルが唯一無二の面白さを生んでいて、オラオラで荒っぽい会話も新鮮で、とにかくグイグイ作品に引き込んできます。

一緒に行動しながら少しづつ距離が近付いていく竜二と薫の姿は、全く違う世界ではありますが、ゲームを見事にドラマ化した『ラストオブアス』を連想してしまいましたよ。

クライマックスの廃車場でのバトルに『最強殺し屋伝説国岡』の伊能さんが出ていてこれは!と思ってたら瞬殺されてしまい少し残念なものの、西部劇なバトルは全体のトーンともあっており十分な見ごたえ。
伊能さんはやはり良い顔で選ばれたのかなーと個人的にはほっこりしたり。
辰巳が決めた落とし前や、その思いを受け取り決意する薫。 バイオレンスで暗いお話ながら、少し爽やかな気持ちになれるラストがまた良し。

地方の小さな組織で、更に身内のいざこざという実に小規模な範囲でのお話ながら、俳優一人一人からコントロールしたいという監督のこだわりが作り上げた本作。 細部にわたって魅力あるノワールが味わえる、これまた世界出して誇りたい作品でした!
前作『ケンとカズ』も観なくては!
コブヘイ

コブヘイ