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Ambili(原題)のizuのレビュー・感想・評価

Ambili(原題)(2019年製作の映画)
3.9
愛される者、愛すべき者。

ケーララ州に暮らす知的障害を抱える主人公・アンビリ。
アンビリは誰にでも明るく振舞い、行動や言動こそ子供っぽいものの人々に笑顔をふりまく存在。
幼馴染であり恋人でもあるティーナとの仲も良く結婚も見据えている。
一方、ティーナの弟であり、アンビリの旧友であるボビーは世界一周でギネスブックに載ることを夢見るサイクリスト。カシミールへ旅立つ前にボビーは家族に会うためにアンビリ達の元へ来るのだが、ボビーは結婚に納得できず....。

ストーリーはとてもシンプルなもので、紆余曲折などはなくわかりやすいものになってる。
2時間10分の中で起こる出来事はそこまであるとは言えないんだけど、とにかく美しい。

まず、アンビリの住むカッタッパナの町の緑がとてつもなく美しく綺麗。
緑豊かであり、どこか青に包まれている。いや、蒼。

アンビリのキャラクターも良く、なんとも子供っぽい彼は無邪気をふりまき周囲に笑顔を振りまく。町の人々からも愛される存在。
悲しい事に、確かな知的障害はアンビリにはあるためティーナは彼との婚約に周りから若干否定されているけどその時のティーナの「今まで彼とずっと一緒に居たし、彼に知性が欠けていると思った事はない。」という言葉がグッとくる。
アンビリのキャラや町の人との仲を表しつつ、物語はボビーが来るところで方向を変える。

ボビーとアンビリは元々凄い仲が良かったけど、いつからか友情は薄くなって行ってしまった。(ここだけもしかしたらちょっと間違ってるかも)
アンビリの知的障害もあり、アンビリはボビーの事が好きだけど、ボビーは少しアンビリの事をうっとおしく思っているのも分かる。

この映画で表しているのは「愛」と「友」なんだけど、映像や映し方が綺麗でフィーリング効果があると言われても納得してしまいそうなくらいだった。
カッタッパナの緑、サイクリングの風景、主にこの2つなんだけど、サイクリングになってからは次々と切り替わり、とにかく美しい。
この美に合わせ、アンビリの愉快なキャラも輝く。

本当に美しい映画ではあったんだけど、ストーリーが良い意味でも悪い意味でもシンプルすぎるが故「中身が無い」とも言われそうなのがちょっと否めない感はある。
いやぁでも....個人的には結構好きだし面白かったです。
普段陰鬱で汚いゴア映画ばっか観てるせいか、心が洗われるような気がした。心温まる映画だった。

インド映画なので所々に歌も入るけどそれも気分を高めてくれる。
というかアンビリの家にあるくまのぬいぐるみがめちゃくちゃかわいい。欲しい。

ちなみに’’アンビリ’’という名前には「犠牲を払い、幸福を分かち合い、成功を収める光る月」という意味が込められているそう。

視聴 2023年9月9日
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