ノラネコの呑んで観るシネマ

波高のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

波高(2019年製作の映画)
3.9
フィルメックス。
過疎の島へと赴任してきた女性警官が、島の少女が売春しているのではないかと疑ったことから、小さな島に嵐が起こる。
パク・ジョンボムは、前作「ムサン日記」とはまた別のアプローチで社会の底辺を見つめる。
田舎の閉鎖社会は、日本も韓国もあんまり変わらないな。
少女は幼い頃、海の事故で目の前で高波に両親をさらわれ、トラウマから船に乗れない=何処へも行けない。
家族もいないので、島民みんなが育てた様なもの。
これがホラー系へ行くと「ビー・デビル」となるのだろうが、イ・チャンドン門下生のパク監督はあくまでも人間模様を撮る。
濃密すぎる人間関係が歪みを生み、女性警官が投げた小石が、複雑な波紋を描き出す。
彼女自身も離婚問題と娘との確執を抱え、だいぶ情緒不安定。
バッドエンドを予感させるミスリードも巧み。
途中登場人物の行動に疑問符がつく部分もあるが、なかなか見ごたえのある人間ドラマ。
主要登場人物の葛藤には一応の決着をつけつつ、
発端の事件そのものは、全然終わってないのも好き。