ぺぷ

運命じゃない人のぺぷのレビュー・感想・評価

運命じゃない人(2004年製作の映画)
4.7
ポップなミステリー作品のように感じました。先日伊坂幸太郎の「チルドレン」という小説を読んだのですが、少し楽しみ方が似ているような気がします。
序盤三十分、お人好しで控えめでいかにもモテなさそうな男と、婚約者の浮気をきっかけに1人飛び出た女性の出会いから連絡先を交換するまでのやり取りをしっかりと描きつつ、さてここからこの二人が中心となるコメディドラマが始まるのか、と思わせてからの突然のスポットライトの転換。
彼らが初々しく中を深めていた時間の裏側で、実は男の親友が、男を詐欺のターゲットにしていた女が、果てはその女を囲っていたヤクザの組長が…。
登場人物がそれぞれの思惑で動き、迷い、慌てふためく様子が序盤のシーンと絡めて描かれ、実のところ何が起こっていたのか?が少しずつ明らかになっていくストーリーが、コミカルかつテンポよく展開されていきます。暇をさせない作品でした。
序盤の周囲とはまた別の世界にいるような空気感を表現したシーンの撮り方も好きでしたが、何より面白い演出だな、と思ったのは男の部屋を「明日貸してくれ」といった、最序盤とラストシーンだけに登場する同僚の存在。彼がラストシーンで部屋を借りに男を訪問したことで、観る側はああ、あれだけのことがたった一晩の間に起こっていたというのか、とハッとさせられます。
途中経過も終わり方もとても楽しめる映画で、2023年ラストに観た映画がこれでよかった、と思える作品でした。
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