ヒチ

声なき炎のヒチのレビュー・感想・評価

声なき炎(2019年製作の映画)
3.8
血と暴力に塗れたコロンビア映画の起源を、何故自分の母親が言葉を発さなくなったのかという個人的な問題を絡めて暴き出す。コロンビアの映像メディアが関わってきた凄惨な出来事の数々に愕然とした。政府が反政府ゲリラに対して優勢であることを誇示するために、一般の人々を連れ去り殺して反政府ゲリラの遺体だと偽っていた事件(要するに点数稼ぎ)は余りの残酷さに言葉を失ってしまった。

この「言葉を失う」ということが比喩ではない形で監督の母親に起こってしまったのかと思ったけど、言葉を発さないことがどのような情報にも介さず何者にも加担しないという彼女に唯一できる抵抗だったのかもしれない。そして、そのようなコロンビア映画の負の歴史を直視しながらそれでもカメラを向け続ける監督の忽然とした態度に心を動かされる。
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