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声なき炎
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『声なき炎』に投稿された感想・評価

mingo

mingoの感想・評価

3.9
YIDFF2019で見逃した一本。
1906年コロンビアの大統領暗殺未遂の罪により4人の男たちが銃殺刑に処せられたが椅子にくくりつけられ放置された死体を眺める群衆をとらえた一枚の写真。のちにこの写真は事件を描いた劇映画にクーデターの失敗として用いられ、独裁権力を強化する発端になったとされる。つまりコロンビアの映画史の始まりは暴力の歴史と結びついてきたと本作は語る。そしてそこから自分の母親が話すことを突然やめたのは何故なのかという問いから映像における改ざん、捏造、プロパガンダは決して個人の記憶と無縁ではないという語り口へと移行する。彼女の残したホームビデオを手掛かりに犠牲となった人々の傷、押し潰された声なき声が顕在化する。イメージの戦争。
yidff2019「Double Shadows/二重の影 2」
コロンビア映画史と自分の母の無言症を結びつける。映画と暴力の不可分な関係性と、無名の人々のプライベート映像(美しい)が全編にわたり交差する。コロンビア映画史における映像のプロパガンダ性、作為性を自分のホームムービーにまで遠近させる試みである。自然の中で母親を遠くから捉えたロングショット。母親はカメラを一瞥するが、にこりとも笑わない。

1906年のラファエル・レジェス大統領暗殺の容疑者を銃殺した写真。これとエジソンの制作した処刑映像をダブらせる、ということはコロンビアにおいて映画の原初はリュミエールじゃないとか…?
全体に、なんかゴダールが最近やってることに近いと思った。これはかなりの良作。なんとか劇場公開を望む。
ヒチ

ヒチの感想・評価

3.8
血と暴力に塗れたコロンビア映画の起源を、何故自分の母親が言葉を発さなくなったのかという個人的な問題を絡めて暴き出す。コロンビアの映像メディアが関わってきた凄惨な出来事の数々に愕然とした。政府が反政府ゲリラに対して優勢であることを誇示するために、一般の人々を連れ去り殺して反政府ゲリラの遺体だと偽っていた事件(要するに点数稼ぎ)は余りの残酷さに言葉を失ってしまった。

この「言葉を失う」ということが比喩ではない形で監督の母親に起こってしまったのかと思ったけど、言葉を発さないことがどのような情報にも介さず何者にも加担しないという彼女に唯一できる抵抗だったのかもしれない。そして、そのようなコロンビア映画の負の歴史を直視しながらそれでもカメラを向け続ける監督の忽然とした態度に心を動かされる。