舞台はハンガリー。
ホロコーストを生き抜いた少女と男性医師の物語。
家族の中で唯一生き残った16才の少女クララは尖っている。頭もよく知識も豊富だけど、この世のもの全てに反発している。
大叔母も手を焼く中、少女が惹かれるように近づいていくのは、診察を受けたことのある、42才の婦人科の医師アルド。
彼もまた家族を亡くし、たったひとりこの世に残されたのだ。
医師は表情もなく淡々と生きている。
同じ悲しみを背負ったもの同士、磁石のように引かれ合って、お互いの孤独を補い合っていく。
クララとの関係はアルドの心も変えていく。
孤独を癒せるのは孤独だった。
父と娘のような関係でもあり、それ以上でもあり、危ういながらも微妙な関係を維持していく。
尖った少女が抱きしめられることで心の平穏が得られたシーンが印象的だった。
誰かに抱きしめてもらいたくて、仕方なかったんたんだろう。ひとりぼっちで寂しくて、辛くて孤独で仕方なかったんだろう。
クララの危うい美しさや、アルドの無表情の中の苦悩が際立つ。
明るい未来を予感させるラストだけど、その後のハンガリーの歴史を考えると、それは儚い望みでしかなかったのかな·····切ない。