せみ多論

アイアンガールのせみ多論のレビュー・感想・評価

アイアンガール(2012年製作の映画)
1.0
所謂B級映画が好きな身として、とてもいい経験をしました。
しかし個人的に気になる点があったので、いくつかあげてみたいと思います。あくまで主観ですので、本作のファンの方がいらっしゃいましたら、どうかお気を悪くされないでください。

・ギャグがつまらない
これは個人的なものなのでしょうがないと思いますが、とても寒いです。夏場ならば良かったのですが春先とは言え、気候はまだまだ辛いもので、一層堪えました。

・演技が上手くない方が多くご出演なされている
これも宜しくありませんが、この手の映画を見る方はそう言った部分も含めてお楽しみになる方が多いと思われますので一概に悪いとは言えません。言っておいてなんですが、私めはこういった味のある演技で彩られた映画は好きな部類でございます。

・音楽に使える予算がなかった
これは製作サイドも辛かったのでしょう。作中では、恐らく3パターンほどしかない限られたBGMが延々と奏でられてきます。これがまた耳に残る会心の出来栄えなので、その使い回し感が一層際立った印象となります。

・演出に使える予算がなかった
これも辛いですね。こういった映画は行き過ぎたグロ描写やエロ描写、それがやりたかっただけだろうと観客を勘ぐらせることに命を賭けてくることが多いのですが、それも叶いませんでした。
刀で腹を刺されようとも、蹴り倒されようとも、どれも例えるならば取組前の力士が吐き出す力水ほどの、わずかな血のりしか出ないではありませんか。死ぬ直前よりも、目を覚ませと愛の鞭を受けるシーンのほうが、気持ち多めの血を吐いている方もいらっしゃいます。貴重な血のりです。使い方を誤ってはいけませんね。
エロシーンに関してもほぼ無いといっていいものです。この作品を手に取る方には明日香キララのそういったシーンに期待を込めている方も少なくはないと思いますが、その期待は見事裏切られます。ジャブのようなものが2,3あったかなと思ったところで試合はおしまいです。そこだけに注目していると、あっという間に見終えることができるので、人間気の持ちようかもしれませんね。

・ストーリーそのものが面白くない
これは致命的です。エログロができないとなると、もはや本格路線での勝負を強いられるものです。しかしながら前述の通り演技のほうで幾らかの問題が生じているのです、更にそこに追い打ちをかけるように脚本の魔の手が忍び寄ります。世界観や主人公の秘密のほっぽり加減。村というにはあまりに少なすぎる村人。一台のラブワゴンに全員乗れてしまう程の過疎地域です。物語自体も一切のひねりがありません。ストレートのみでの勝負。武骨なものです。

・続編が出てしまっている
これはどういうことなのか全くわかりませんが、明日香キララのファンでお金持ちの方がいらっしゃったのではないか、としか思えません。


主人公アイアンガールは最後の最後で自らの名を、クリス、と明かします。物語の点と点を線でつなぐかのような雰囲気を出してきますが、ハッタリです。もはや何も理解が及びませんでした。いっそ開き直って明日香キララですとでも言ってくれれば最後に、あぁぶっこんで来たな、と嬉しく思えたのですが。

結論としては、自分が今までつまらないなと思っていた映画たちに、再評価の機会を与えてくれる、そんな映画でした。そういった意味で本作は、作中のアイアンガールと同様、映画界の救世主なのかもしれませんね。
せみ多論

せみ多論