あにやん

大地震のあにやんのネタバレレビュー・内容・結末

大地震(1974年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 私が映画館に通うきっかけになった映画で、映画館で見なければ意味がない映画の見本。

 この映画に採用されたセンサラウンド方式、こればかりは実際に体験してみなければ判らないシロモノで、重低音による空気震動という意味では立川シネマシティの極上爆音あたりを連想させますが、そのネーミングの元ネタがコレな『ガルパン』の極爆センシャラウンド・ファイナルにしてもセンサラウンドとは別物です。
 不可聴域の重低音を純粋に空気震動させるために、大量のスピーカーと増幅用の巨大ホーン(スクリーン前と最後部の座席を潰す形で設置されてました)で場内を囲んだそれは、デジタルの低音トラックをウーファーで鳴らす鳴り方とは違う世界でした。
 体の内側から揺さぶる圧倒的な音圧(聴覚が捉えるのはスピーカーから発せられる音ではなく、空気が震動する「音」)はまさしく体感する音響システム。

 更に、視覚いっぱいに広がる70mmのスクリーン(当時有楽座は日本一のキャパを誇る映画館で、スクリーンも巨大でした)。カーチェイスシーンでの一人称視点はロスの街を実際に走るような感覚。
 家庭では決して味わう事のできない、まさしくアトラクション感覚の映画なのでした。

 物語自体は今見ればあまり面白いものではありません。チャールトン・ヘストンは不倫の末に正義に殉じてゆくしかなかったヒーロー。巨大な障害を通して人の行いの真価を問うという構造はパニック映画の定石であり、ジョージ・ケネディがご丁寧に「災害は人の本性をさらけ出すのさ」と台詞にして教えてくれます。
 大地震の予知がされていながら結局あまり役に立ってなくない?という展開は『地震列島』『カリフォルニア・ダウン』に継承されておりますが、この要素が無いと間が持たないのでしょうかねぇ。いや、それを入れておかないと地震が来るまでに一体なんの映画か判らなくなるからですか。

 予算以下で収まったらしい(余った予算で『エアポート'75』が作られたらしい)のですが、大地震シーンでのオープンミニチュアセットは大変良くできております。この映画を見た当時は高速が落ちるシーンや斜面に建つ家が倒壊するシーン、水が押し寄せる水路など、実物大セットだと思ってましたし。
 サントラのジャケットに使われている崩壊した街の画像や炎上する高層ビルなどはミニチュアですらなく、ただの絵だと知るのはもっと後の事。

 初めてサントラ盤を購入した映画で、そしてその後、短期間に『タワーリング・インフェルノ』『ジョーズ』『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』と続くジョン・ウィリアムズの大メジャー作コンボに圧倒される、その最初の作品でもありました。

 この映画の見世物っぷりに惹かれた事が映画好きになるきっかけだったのは確かです。でも、そこが入口になって、スターや演出、脚本、映画音楽、特撮、アメリカの文化など様々な要素に興味を持ち、映画館に通うようになったのですから、そんな見世物っぷりも映画にとって必要だと思います。

 このハリウッド大作には当時のハナタレ小僧を夢中にさせる魔法がいっぱい詰まっていたのでした。

1974/12/31 有楽座 70mm センサラウンド 他計7回
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