KnightsofOdessa

スーヴェニア -私たちが愛した時間、後に-のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

4.0
[イギリス、遺された者の悲しみと映画製作について] 80点

傑作。批評家から高い評価を受けならがも観客からは総スカンを食った前作から2年が経ち、その第二部が完成した。前作以上に批評家からの評判は良いが、『グリーン・ナイト』『LAMB』『カモン・カモン』に挟まれての公開だったためか、あまり注目を浴びなかったようだ。第二部ということで、前作の続きから始まる。過剰摂取でアンソニーを亡くしたショックから立ち直れていないジュリーは、卒業制作に身が入らず、実家に帰省したり、アンソニーの実家に行ったり、ふらふらした時間を過ごしていた。教授陣は明確な物語や意図が欠けているとして支援をしないと通告され、ジュリーは更に内向的になっていく。今回はフワッとしたまま卒業制作を進めるせいで周りから怒られる、という映画製作映画へと変貌してる。自分は正しい方向へ進んでいると自己暗示しながら突き進む姿から、愛した人の死に囚われてしまった心、傷付きやすい内面を繊細に映像化している。そして、大きな悲しみをポケットの中の小石に変わるような、感情の変化を"映画製作"の過程に落とし込んだ上で丁寧に紡いでいる。構造としては前作と同じくジョアンナ・ホッグとティルダ・スウィントンを通して幾重にもレイヤーが重ねられたメタ映画のようでもあり、ホッグ自身は本作品を"再構築の解体"としているらしい。

劇中でジュリーが製作した『The Souvenir』という映画が上映されており、その断片を観ることが出来るのだが、ジョアンナ・ホッグ自身の卒業制作でティルダ・スウィントンのデビュー作でもある『Caprice』と酷似していた。『Caprice』ってそういう映画だったんだ…とコンテクストを理解するなどした。
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