メル

最後のフェルメール ナチスを欺いた画家のメルのレビュー・感想・評価

3.9
舞台は終戦直後のオランダ。
第二次大戦中にナチスドイツにフェルメールの贋作を売って財を築いた男、ハン・ファン・メーヘレンの実話。

彼は20世紀最大の贋作画家として有名で、ナチスに売ったフェルメールが真作なら戦時中にナチスドイツに協力したという国家反逆罪で死刑。
しかしその絵が本物でなければナチスを騙し手玉に取った男として英雄視される事になる。笑

彼の捜査を行ったジョセフ・ピラー大佐は、メーヘレンを血祭りにあげようと躍起になる周囲の人々に反して冤罪から彼を救うために裁判に臨む。

メーヘレンがどうやって鑑定家たちのチェックをすり抜け、彼の贋作をフェルメールの真作だと信じ込ませたかについては「ナチスの愛したフェルメール」(1916)の方が詳しいが、メーヘレンは自分の絵を時代遅れだとか、魂が感じられ無い等と散々に貶した当時の批評家の鼻を明かすことが1番の目的だったのだ。

ある意味、美術業界への復讐として贋作を描き続けていたのだ。

裁判ではそれらの絵がメーヘレン本人が描いたものだと証明する事が中心となってくる。拘束中に彼が絵を描く写真はwikiでも見られます。

メーヘレンを演じたガイ・ピアースは、顔立ちはメーヘレンとは全く違うのに、周囲を煙に巻いたり、変な自信を持つ詐欺師っぷり(勝手な想像)がピッタリだった。

ピラー大佐がユダヤ人という事もあり、オランダでも差別する人は居るし、バックグラウンドが色々と描かれているのが良かったし、クレス・バング(ザ・スクエアの主人公)の静かな怒れる男も良かった。

アシスタント役のヴィッキー・クリープス(ファントム・スレッド)の魅力はあのハスキーヴォイスだと確信。

真に偉大な芸術家とは批評や疑いの中を果敢に進む人…君には勇気が足りなかった。

裁判の見せ方には多少の脚色はあったと思うけど、後日談も中々重みがあって良かった。
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