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すばらしき世界のwksgknchのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

『すばらしき世界』

Filmarksの試写会に当選して観ました。

原案は佐木隆三さんの『身分帳』
監督、脚本は西川美和さん、これまでオリジナルのみだった西川監督が、
初の原作物に挑んだ作品。

主人公三上を演じた役所広司さんの演技がもう言うこと無し、演技賞を獲ったのも頷ける。
TVディレクターの津乃田を演じた仲野太賀も負けじと良い演技を見せてくれた。

身分帳というのを初めて知ったが、収容者の経歴や所内での行動や犯罪記録などが記載されている書類のことで、つまるところ三上の生きてきた歴史です。それが津乃田の元に届くことから物語は始まります。

第56回シカゴ国際映画祭にて作品が観客賞、役所さんが最優秀演技賞を受賞

こんな時代だからこそ、映画の力、映画だけでなく、舞台やアートなど、誰かの思いによって創作されたものによって、知らなかった世界、価値観を享受できることの素晴らしさを身を以て体感した。

懸命に生きようとする三上のその不器用さは愛おしいし、だからこそ集まってくる人たちの普通の優しさが沁みる。それ故に、逆説的に悲しさが際立つ、こんな普通のことですら三上にとっては大きな壁で、死物狂いにならないと手繰り寄せることすらできないなんて。
まっすぐぶつかってくれる友人もでき、終盤、身元引受人の夫婦が語るのだけど、僕ら(マジョリティの私達のこと)はもっと適当に、いい加減に生きているよ、と、許せないことがあっても多少のことは目をつぶり、聞こえないふりをして、そうやって生きているよと、世の中は白黒はっきりつかないことだらけだから、もう少しゆっくり進んでいこうというと告げる。

誰もが誰かの立場や身になって考えることが少しでもできれば、もう少し社会は寛容で、良い世界になるんだけどなあと。

幼い頃の愛情不足が原因と考えられなくもないが、その境遇だってしっかりと生きている人だって多分ごまんといるだろうから、どこにだってそのきっかけはあるのだと思う。でも今回の映画で確かだと感じたのは周りに家族、友人、仲間という気にかけてくれる人たちがいることが、とても重要だということ。


是非ご覧頂きたいです。
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