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すばらしき世界のjamのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

見上げてごらん夜の星を 
小さな星の 小さな光が
ささやかな幸せをうたってる


まだ闇が怖かった幼い頃は
夜空を見上げることにさえ恐れを感じて
そこに瞬く星の煌めきも知らなかったけれど

誰が教えてくれたんだろう
蒼い光の月や寄り添うような星たちが
私をそっと見守ってくれていることを


日本各地を転々としていた三上
彼が見上げた東京の空には小さな星がひとつ
収監された13年前にはまだなかったスカイツリーとともに彼の就職を祝う

「今度ばっかりはカタギぞ」と嘯いたものの、
病んだ身体と時に取り残された状況で
何もかも上手くいかず
またいつも出所後のように
"手っ取り早いから"もしくは
"他に頼る人がいないから"と組長へ連絡を取る
彼の世界は
東京タワーが彩る時代に遡るようだった


組長夫人の言葉が染み入る

娑婆は我慢の連続
我慢の割に面白くもなか
けどね 空が広い、言いますよ
ふいにしたらいかん


子供と今度こそ一緒に暮らす
と話す風俗嬢に母の面影をかさね

母に会えたら?という津乃田の問いに

お産の時の話をしたい
どげんして産んでくれたか
母ちゃんしか覚えとらんことばい


最愛の母は見つからずとも
育った施設の園歌を歌い、
子供たちとサッカーに興じる真っ直ぐな瞳で

死ぬわけにはいかん
会いたい人もいる
仕事をはじめて笑い合える仲間と繋がった

新しく、ささやかな三上の"世界"
星の光りが見守り…


希望が見えた気がして
そのまま
と祈りつつ見つめた


乾いた空
萎れた秋桜
皺だらけの、優しい手


どのキャストも素晴らしいけれど、
「ヤクザと家族」でヤクザの哀愁を好演した北村有起哉が一転してケースワーカーを演じていたのに胸が熱くなる
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