このレビューはネタバレを含みます
見る人によってタイトルを素直に捉えるか皮肉と捉えるかが変わる、絶妙な匙加減だった。
壁にぶつかりながらも無事就職。シャブ吸ってるのかというぐらいの充実感。でもやっとたどり着いた環境では自分の正義をぐっと我慢して、不快な場面をやりすごす。助けてくれた人たちの「顔に泥を塗りません」と誓った以上、そして生活がかかってる以上、易々と辞めるわけにもいかない。
この先はそういう日々が続く。三上は幸せなのか?
津乃田はカメラをやめて、書くことにしたと言う。背中を流しながら「三上のことを書く」と伝えるシーンは感動的だったし(泣いた)、誰か一人でも三上が生きた証を残したいと思ってくれたなら救いがある。だけど、手段がカメラか執筆かの違いなだけで、異分子を外から眺めてエンタメ化するという点は変わってないとも捉えられる。津乃田はラストシーンで「困るんですよ」と泣いていた。「困る」とは?「書く対象がなくなって困る」とも取れる、微妙な言葉。
テレビ局の吉澤は、三上を都合よく利用したがるイヤ〜なキャラだけど、カメラを持って逃げる津乃田に「撮って伝えるか、撮らずに仲裁に入るか、どちらかにしろ」と憤る。彼女の信念、正義があらわれた言葉で、この一言があるかないかで吉澤の人物像は結構変わると思った。
ずっと白黒つけられないグレーな感じ。暗すぎず明るすぎず、汚すぎず綺麗すぎず、西川監督のこの感じがとても好き!
そして役所広司さんも更に好きになった。
タイトルはそのままの意味でもあるし皮肉でもある…という自分なりの結論に至った。