こーじ

すばらしき世界のこーじのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.2
長い年月を刑務所で過ごした殺人犯の三上が、13年ぶりに社会に出てきて、なんとか世の中に適応とする。その様を面白がるテレビマンが近寄ってきて、ひと騒動起きる。

まず役所広司の演技が素晴らしい。
この実直であり、不器用であり、純粋であり、しかしどこかとち狂っている三上を見事に体現している。

そして、そんな彼に寄りそう仲野太賀の眼差しがこれまた良い。彼こそは第二の主役であり、仕事を超えて三上と絆が結ばれる様は、あくまでビジネスライクの長澤まさみと対をなしていて、感動的だった。

僕ら観客は、三上が何とか社会に適応していく様を応援する。短気を起こさず、頑張れと思う。そして、見事に形だけでも社会適応した三上を見て、我が子のように嬉しくなる。
しかし、この映画は観客を気持ちよくさせてくれない。
そうした三上が適応した社会というのは、本当に価値があるものですか?という事を突き刺してくる。
だからこそ、三上はあんな結末を迎えるしかなかったのだろう。
そこに作り手の誠実さが垣間見れた。

唯一の不満は、こちらをハッとさせてくれるような絵作りがなかった事かな。どのシーンとっても高水準なのだけど、濱口竜介のようにアイディアに優れた映像は見られなかった。
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