りょう

すばらしき世界のりょうのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.2
2021年に観た100本目の映画。Filmarks初めてだいぶ経つけど、初めて100本観れた。観たいものがたくさんあったし、何より映画でぼーっと思い出してしまう、思い出しても仕方のないことをかき消したかったのかも。
自分の中の記念すべき100本目の映画に相応しい、ほんとに素晴らしい映画でした。

「私たちはもっといい加減に生きているのよ」

「いい加減」とか「適当」とか、本来ちょうどいいっていう良い意味なのに、悪い意味で使われることが多い言葉。でも、良い意味での「いい加減に」や「適当に」生きることって難しい。三上にはそれができない。
血圧は降下剤でコントロールできるけど、感情は簡単にコントロールできない。

自分の今の境遇は自分を見捨てた母親のせい?きっと三上は自分がこうなったのは母親のせいじゃない、母親はきっと自分のことを愛してくれていたはずだ、自分が乱暴に生きるということは、すなわち、母親に愛がなかったことの証明になってしまう、そんなことを思ったのかもしれないと思った。でも人はそんな簡単には変われない、前半ところどころ言ってたけど、生きるために「猫かぶっている」だけで、本当は改心などしていなかったのかもしれない。

役所広司の笑った時の人懐っこい感じ、すき焼き食べながらの涙、施設でのサッカーのシーン、などほんとに素晴らしい俳優だと思った。
そしてそれに応える脇役陣。
何といっても太賀の泣きのシーンはどの映画やドラマでも心動かされてしまう。
橋爪功の話し方のあのゆっくりのトーン、いぶし銀。
教習所の先生、ワイパー動いてちょっと笑っちゃうのが自然。
六角精児もめちゃめちゃいい人。特に介護の仕事が決まった時のあの喜ぶシーン泣いた。
それと、介護施設の同僚の人。障がい者のマネをしたりするシーン。それに対する三上の「似てますね」薄ら笑いに泣きたくなったし、めっちゃむかついたけど、でも彼なりの正義があったり、直後にお年寄りに対応しにいったりと、まさに「いい加減に」生きている象徴だった。すごい演技だった。

女性陣で行くと、安田成美の裁判のシーンの「どんな話し合いがありますか」っていうときの顔がたまらない。
それと免許センターの婦警さんもよかった。
そして長澤まさみのエロい手と、「あんたみたいなのが一番なにも救わない」に心えぐられた。

この映画を作る過程を記した西川美和監督のエッセイ「スクリーンが待っている」も読んでみたい。「永い言い訳」といい、「ゆれる」といい、最高だったけどこの「すばらしき世界」も最高でした!

今年もたくさんのすばらしき映画に出会えました!!
りょう

りょう