むるむる

すばらしき世界のむるむるのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2024年最初の映画。
映画として面白く、良かったのだが最終的に抱いたのは複雑な気持ちだった。

ラスト主人公が死ぬ必要はあっただろうか?ということが観終えた後ずっと残っている。
原案となっているものが最終的に亡くなると決まっていてその通りになぞったのかもしれないが、この作品が鑑賞者にもたらすものを考えるとはたして死ぬ必要はあっただろうか…

一度道を踏み外した人間が社会に戻ることの困難を描き、その末に社会の一員として認められる経緯と希望を見せた本作だけに、最後に亡くなってしまうことで「やはり一度踏み外した者は戻れないのか」と私は少し突き放されたようにも感じてしまった。
亡くなるのではなく、コスモスを抱えて帰路に着くところで終わっていれば、数々の問題を抱えながらも社会の片隅で生きていく希望は与えられたのではないか…と。

ただ、この映画を観るであろう人達を「社会のはみ出し者(主人公側)」ではなく「社会をはみ出したことのない者(例えば施設の、物真似をして笑っていた人間側)」と想定しているのであれば、「私達の行いがはみ出し者を殺す」というメッセージにもとれなくもないと思う。
人として許せない行いを呑み込ませて、怒りを呑み込ませて、心を殺した上に結果間接的に高血圧で死に至らしめたと考えると、あれは社会的強者による殺人とも言えるのかもしれない。

そこまで考えて、彼の死には意味があったのかな…とも思いつつ、しかし私としては死なないでほしかったと思う。
確かにラスト亡くなる姿を描いた方が物語の盛り上がりはあるのだが、死ななくて良い人物の死をカタルシスに使うのは個人的になんか違う…!となるので、死に理由があってほしいと思ってしまった。(※現実の生死に意味はないと思っているけど、エンタメではあるべきと思っている)