ひでG

すばらしき世界のひでGのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.2
2100本記念レビュー!
観たのは数日前だったのですが、先週末から発熱し(コロナ、インフルではなかったのでホッ😌)書けませんでした。気が付いたのですが、微熱があっても映画は観れますが(内容によりますが)、レビューは書けませんね。ましてや、本作のように多くの方に支持された名作は体調十分でないと、向き合えないと思いました。

監督デビュー、2003年の「蛇いちご」以来本作まで18年間で長編6本の寡作系監督
西川美和さん。デビュー作以外(本作も含め)5作全てがキネ旬ベストテンに入る高打率ヒッター。僕も信頼感抜群の監督さんのひとりです。

インタビューの中で、大手会社からの持ち込みオファーも多かったけれど、自分が作りたい題材と撮りたい役者さんがピッタリ合わないと撮らないと仰っていた西川さん。それまで脚本もオリジナルだったのに対して、初めて原作ものにチャレンジされたのには、原作の力と共に、この役を役所広司さんで撮りたい!という思いが強かった、と語られていました。

刑期を終えて社会に戻って来た男の物語。前作までの西川オリジナル脚本作とは異なり、割とどーゆー展開かの予想がつく話だけに、それまで以上に一場面、一ショットの役者の演技や撮影に重きがより置かれたいたと感じました。

殺人を犯し13年の刑期を終えた三上。出所直前に、反省しているかと訊かれた時に判決や被害者に対しての不服を並べる三上。それまでの従順で一見真面目そうな態度とは裏腹の、しかも即、変わってしまう様子。役所広司のセリフや行動で、もう冒頭数分で三上像が観客に伝わります。

根は真面目で周りの人への恩を大事にする三上。でも、納得できないことには、怒りの感情が瞬間的に湧き、それが暴力へと進むことを止められない面も持っています。
身元引受人夫妻に迎えられた食事の場面。
観客としては、彼の真面目さと、もう務所には戻りたくない、更生したいという気持ちは十分に分かりますが、同時に、彼の甘さ(再就職に関してなど)が気になりますし、いつ感情がアンコントロールになるか、と不安にもなります。あの刑務所での三上が蘇ります。見せ方がとても上手たなと思いました。

上手と言えば、三上の周りの人物の描き方です。明らかに善意、悪意、という形で振り分けた人物を置かないところも素晴らしいです。

三上を取材するフリー記者の仲野太賀くんも当初は、売れる題材としと三上に接近しますし、後に三上と心を通わせるスーパー店主の六角精児さんも、初めは前科もんとして彼を捉えていました。

主役だけでなく、その周りの人々を丁寧に描く、魂を注ぎ込むことにより、主役の人間性が一層膨らむという「名作スパイラル」が生まれているのです。(福祉課の北村有起哉さんも良いですよね〜)

途中退席しますし、三上を見る眼はそれらの方々とは一線を画す人物ですが、長澤まさみさんの激怒セリフも間違ってるとは言えない、重要な提議だと思いました。

ただ、自分の撮りたいものだけにこだわる西川映画は、「良い話」だけで終わるはずはありません。

介護施設で働く三上。彼がとった行動は、、思いは、、これは、もはや前科もんの話だけに止まらず、私たち社会人にも
問われる場面だと感じました。
キムラ緑子さん演じる元兄貴分の奥さん
が「しゃばの空は広い。」と三上に語りかけますが、三上が見た空は本当に広かったんでしょうか。
「良い映画は観たあとから広がる。」と言いますが、この終盤、たくさんの人と語り合いたいです。

最後に役者さんについて。若手俳優(どこまで?僕の基準では小栗旬より歳下)の役者さんは何をおいても役所広司とガチ共演をした方がいい、と僕は思っています。
大好きな仲野太賀さんが本作でがっちり組んだこと、とても嬉しく思っています。
だから、一番好きな(一番泣いた)は、サッカーからの銭湯のシーンです。
「もう戻らないでくださいよ、三上さん。」と語る太賀くんに、背中だけで応じる役所さん、、あの背中を直接見ていた太賀くんの想いを想像するだけでまたまた涙です。

本作の三上、「孤狼の血」の大神、そして
「PEFECT DAYS」の平山、

忘れられない生きた登場人物を遺してくれる数少ない役者、役所広司さんのがっちり組めるスタッフさんと若手俳優を求む!
次作も期待しています!

以上、2100目でした!ありがとうございます!
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