六四二

すばらしき世界の六四二のレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.0
出演の顔ぶれや演出が山田洋次の人情噺を思わせる。西川さんの今までの作品と違う印象を受けるのは、分かりやすいモチーフをストレートに描いているからだと思う。役所さん演じるのは殺人の刑期を終えて刑務所を出た一匹狼の古風な893だ。そういう知り合いがいなくても人物像は想像しやすい。そして概ね期待通りのストーリーをやってくれる。なので万人が置いてけぼりにならずにすむ。西川ファンの自分などは、役所と西川のコンビで練り上げられたであろう台詞や主人公の行動を味わうのが楽しい。基本フツウの人なれど、何かの拍子にヤバい人になる。これまで映画に登場した中で最もリアルに感じる昭和の893である。
人を多元的に捉える西川さんの作品の作り方は変わりがない。本作では脇の人の見え方を卑から貴に転換させることで見るものの心を動かす。役所を支えるその人たちの存在が役所にこの映画タイトルを思わせることになるが、このへんも直球である。
そしてベンダースに続いたのではないのかな?
六四二

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