ノリワンコ

すばらしき世界のノリワンコのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.6
素晴らしき役所広司、そして仲野太賀。

しかし


「素晴らしき世界」???


最初の三上は長い刑務所暮らしで規則正しく、歩く時は行進、声は大きくハキハキと。
しかし不条理な事に出くわすと正義感が暴走し、加減を知らない。

普段の不安気な姿から怒りを感じ時や暴走してチンピラを叩きのめした後の嬉々とした表情。
怖い。

この人いつどんなスイッチでキレるか分からない。
津野田が逃げ出すのも当然。
なのに吉澤の無責任だが正論を投げつけられ、自身も三上を正論で追い詰めてしまう。
元の世界に戻りかけたが戻ってきた三上と母親のいた施設に行って、少年のようにサッカーを楽しむ姿は津野田が言っていたような理由で「この人は心が子供のまま大人になってしまったんだなぁ」と思った。
チンピラを叩きのめした後の嬉々とした表情も“悪い奴やっつけたから褒めて”っていうような自慢気で少年のよう表情だったから。

就職祝いの時に「時には逃げる事も必要」と津野田と同じ事を言われた三上がキレる事なく理解しようとする姿とそれを見守る津野田の演技は特に良かった。
本当に涙が出るほど嬉しかった。

介護施設で職員同士の揉め事を目撃した時もどちらが正しいのか分からないが、生きづらいのは三上のような人間だけではないのが痛いほど分かる。

終始、周りの人達が良い人なのか悪い人なのか、三上がキレてしまわないかドキドキしながら観ていた。
みんな良い人だけど、自分を守る為には良い人だけでは居られないし、逃げる事も必要。

しかし明るい未来を感じた直後の最後は、三上が犯罪を犯した夜と同じなのがあまりにも残酷。

空は広いけれど、
果たしてこの世界は本当に
「素晴らしき世界」なのだろうか?
ノリワンコ

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