カポERROR

すばらしき世界のカポERRORのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.5
まごうことなき傑作。
泣ける映画は数あれど、ここまで心を洗われる作品にそうは巡り会えない。
文句なしでオールタイムマイベストTOP10も更新である。
本作、現在公開中の『PERFECT DAYS』を観る前に観ておこうと、軽い気持ちでレンタルしたのだが…。
役所広司。
この男に私の魂は揺さぶられ、涙腺は易々と決壊した。
この類まれなる才能と共に生きられる世界…実にすばらしい世界じゃないか。


根は実直ながら、反社に身を置いていた三上。
世間から蔑まれ虐げられながらも、目の前の理不尽には容赦なく暴力で抗う。
そうすることでしか自身の正義や信念を示すことが出来なかった不器用な彼にとっては、目の前の腐った現実こそが唯一無二の世界だったのだろう。
そんな彼が、出所後、彼を親身に気遣う様々な人々との出会いによって、少しずつ成長を遂げてゆく。
決して目の前の理不尽な現実が変わることはない。
だが彼は、その理不尽に対して自らの激情と暴力を振るうことで、失ってしまう大切なものがあることを知るのだ。
その大切な人々の笑顔や真心を失わぬように、彼は自身を律する術を学ぶ。
その行使は、彼にとってこの上ない屈辱であり激しい心痛に他ならない。
だが、その苦悶の先で…虐げられても健気に必死に生きる者の笑顔の花を目の当たりにする。
そうして彼は、目の前の許し難いちっぽけな現実の向こうに、今まで気付きもしなかった果てしない世界が広がることを知るのだ。
今際の際であの花を握りしめながら、彼はきっとこう思ったに違いない。

      「生きたい」

彼にとって、そう思えたこの世界こそが、『すばらしき世界』。


蛇足ながら…梶芽衣子(76)、キムラ緑子(62)、安田成美(57)…私の琴線に触れる名女優たち。
まさに、”すばらしき世代”ではないか。
明日にでもDVDを入手しよう。
相変わらず惨たらしい所業が蔓延るこの生きづらい世界。
やり切れない現実に叩きのめされそうになったその時、きっとこの作品が私達に光を照らしてくれるはずだ。
本作『すばらしき世界』をもし未見の方がいたら、是非に御鑑賞頂きたい。
現在、Amazonprime、TELASA、RakutenTV、TSUTAYAオンデマンド等でレンタル配信中。

追伸)
さて、本作DVD購入により、金欠で今月あと1本しか劇場で鑑賞出来そうもない私は、『PERFECT DAYS』と『哀れなるものたち』…どっちを観に行くべきか?
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