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すばらしき世界のringoのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.3
映画のリーフレットに映る手前の花がコスモスってことに観た後に気付いて心が揺れた。

役所広司、凄い、改めて。

この映画の中で役所広司がデスクライトに眼鏡で勉強している姿があって、少し前に観たパーフェクトデイズを思い出した。偶然にもタイトルが似ている。どんな世界がすばらしき世界か、どんな日々がパーフェクトデイズか。

刑務所から出てきて、自分の家でも正座してご飯食べたり、いい歳の中年男性がミシンを使いこなして黙々と作業をする姿、なんだか哀愁がすごくて、惨めで、憎めなくて、切ない。

働く人で溢れる昼の街中、公衆電話の中でただひとり。孤立した感じがすごく出ていて忘れられないシーン。スーツを着てるのに持っているのはミシンで縫った手作りのトートバッグってのがまた切ない。

社会のレールを外れた三上、そんな三上と接する人々。

もう戻らないようにと、必死にさりげなく三上との繋がりを作る。実際に言葉にしていたのは津乃田だけでも、みんな「もう戻らないで」と言っていた。私も、どうか見捨てないであげてと願った。

手を差し伸べてくれる人がいて、見捨てないでいてくれる人がいて、三上は間違いなく恵まれていると思うし、そんな意味ではすばらしい世界だなと。

でも、見えないふり、聞こえないふりをして、我慢し、向き合わずに逃げる。波風を立てず生きるために、孤立しないために、三上がなんとかして社会のレールに戻ろうとするほど、息苦しく、色がなくなった世界に見えた。

そして最後に唯一色鮮やかだったのはコスモスだったなぁと。

………

アパートの下の階の人たちとのシーン、いきなり怖すぎる役所広司に笑えたし、自動車学校のところも好きだった。

カメラを持たずに会いにきた津乃田、母親しか知らないお産の時の話を聞きたいと話す三上、バスの中、歌うところ、サッカー、自転車、花を植えるところ。

細かく良いシーンがたくさんある。
なんかずっと良かったな。
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