かわうそ

すばらしき世界のかわうそのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ラストがとても良い。

ようやく就職が決まった介護施設で、信念を曲げてイジメや陰口を受け流す。
が、その日に心筋梗塞?で死んでしまう。。

でも、この「受け流す」という対応は、黙殺しているわけじゃなくて、今後じっくり対応するために、一時的に我慢するという苦渋の決断だったのではないかと思える。

そのヒントとして「運転免許試験」がメタファーになっているのではないか。

最初は直情的に一発試験で合格しようとするけれど上手くいかず、その後周りの人の金銭援助を得て教習所に通うようになる。
(それどころか、免許を取ることが全てという考え方も変えての就職だったし)

最後の収監のきっかけとなった事件は、奥さんを守ろうとして若者を殺した殺人罪。出所後もおやじ狩りをしているチンピラをボコボコにしたり、直情的に反応して津乃田との関係が悪くなったりした。

でも、おかみさんの「娑婆は我慢の連続だが空は広い」という言葉や周りの人たちにも応援されて、我慢できるようになった。

その最初の一回目の我慢が介護施設でのイジメ陰口だったのではないか。
イジメや陰口の被害者であるアベ君からコスモスを贈られるのは、皮肉であるとともに、やはりこの先確実にアベ君のためにイジメや陰口を止めさせるだろうという期待が持てる。

もしかしたら全くそんなことは考えていなくて、娑婆のストレスで血管が破裂する未来しかないのかもしれないけど、結末を迎えてなおいろいろ考えを巡らせられる作品って良いですよね。

全体を通して、良い状況と悪い状況が目まぐるしく入れ替わるのもメリハリがあってよい。最後の会話が元妻との電話というのもよい。

役所広司はやっぱり上手い。

名作。
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