富田健裕

ファンシーの富田健裕のレビュー・感想・評価

ファンシー(2019年製作の映画)
4.1
平成も終わるという頃合に郵政民営化がしっくり来ていないとは、何とも乙で御座います。
郵便局で働く人たちが何となく公務員っぽいというのは自分も納得であります。

本業と副業、表の顔と裏の顔、過去の自分と現在の自分。
対比という普遍を『自分の時間』というテーマに乗せて綴られる何とも不思議な緩めのお話。そりゃドンパチもありますし、吸った揉んだもある訳ですが、とにかく緩い!全編カット一つ一つがどこかすっ呆けていて(褒めてます)、物語の中の人物がマジになればなるほど作品の持つ空気との差異に終始ニヤニヤが止まらぬ鑑賞となりました。
やっぱり人間というモノは揃いも揃って皆がどこかしらちょっとだけ可笑しいんだなというのを再確認させて頂きました。

何が何やらサッパリだ。これはあくまでも物語の進行理解という意味で。
原作漫画は未読が故にペンギンの持つ個性と立ち位置に戸惑いを覚えながらのスタートとなった訳ですが(原作では恐らく動物としてのペンギンの擬人化?)、擬人化に擬人化が重ねられ、しかも彼は稀代の詩人であって、その詩の内容も直接的であり比喩的であって、もうこっちの思考の進捗などお構いなしに物語は進んで行くわけです。
何故に彼らが一つの物語というハコの中に納まっているのか、それも至極おとなしく。
「そもそも何なのあんた達?」という疑問を頭の片隅に常に置いて物語を追っていながら、徐々に滲み出て来る孤独感や高揚感。
遂には「上手くいかないもんだよねえ」と、劇中の彼らと酒を飲みながら傷の舐め合いまでしたくなる始末でした。

自分の時間だ、好きに使え。
使い様が判然としていれば苦労はしないのだろう。
富田健裕

富田健裕