無知A

プラットフォームの無知Aのレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
3.4
限りなく深い穴の先には、人間の深層心理、本音が隠れている。舞台は、縦一列に続く塔の中、部屋の真ん中には大きな穴があり、そこを通って食事が上から降りてくる。そして、上の階層から順に、その食べ物を手にしていくといったシンプルな話なのだが、人が出てくる故に、複雑なものとなっている。

共産主義的な考え方をすれば、人が善意を持って食べ物を共有し、分配する事で、誰かが飢え死にすることもないだろう。ただ、少なくとも作中に出てくる極限状態の人間達に、これを求める事は難しい。今作では、そうした理性を超えたものが描かれ、これが人なのだと強く語っている。

そんな中、主人公は変革をもたらす為に、同居人と共に打って出るのだが、ここに今作の面白さがある。出来上がってしまった社会の組織図をどのように打ち壊すのか、答え自体には既視感がある。ただ、そこに行き着くまでのプロセスは面白いと言える。たった少しの簡潔な解答に対して、膨大な量の検証データが用意された今作は、プロセスに全てがかかった作品なのだと私は考える。したがって、見やすい作品とも言える。なので、重く険しい雰囲気から難しい問題を扱った作品だと、予告などから考える人も少なくないと思うが、心配は無用である。多少のゴア表現はあるものの、構造は単純かつ簡単なものだった。もしかすると、何か深いものを見ようとした方々にとっては、酷評したくなる作品なのかもしれない。総じて、主張が弱い。
無知A

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