ひれんじゃく

プラットフォームのひれんじゃくのレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
3.8
残念ながら私の頭ではラストの解釈やところどころに散りばめられた隠喩のようなものを拾うことはできなかった。でもやっぱり強烈だった。「実際には十分に行き渡るくらい食べ物はあるのに、下の階層になればなるほど一切その恩恵を受けられなくなる」という表現があの「穴」で非常に良く表されていたとは思う。一階違うだけでも上の人間は力を持ち、下の人間はそれに従う、という明確な格差が生まれているのを見て社会を見てしまったようで怖気だった。

0階で食べ物を作っている人たちの思考と穴の中にいる人たちの思考は根本的に違うような気もして、その溝の深さにため息もつきたくなった。かたや料理の出来にこだわり、髪の毛が入っていたことに激昂して部下を怒鳴りつけている。かたや同室の自殺したルームメイトの肉を食べて生き残ろうとしている。「なんで穴という設備ができたのか」「料理人たちはぐちゃぐちゃに、かつ綺麗に食い尽くされて帰ってきた食器の残骸を見て何もわからないのか、それともあえて無視をしているのか」などなど疑問は尽きない。けれども皆が結託して現状に立ち向かう、その「一体感」みたいなものをひたすら賛美し、信仰する時代はもう終わりを告げたんだな、ということだけはよく理解した。ドント・ルック・アップでも思ったけど。結局は自分の生命が大事ですよね。

変化は勝手に起こるものじゃない、といって行動を起こした主人公に憧れはするけど、怠惰で臆病な自分になにかできることはあるのだろうか。いざというときに、下層の人に食べ物を取り分けられるようなそんな人間でいられるのだろうか。選挙には行きます。もちろん。
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