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プラットフォームの3104Arataのレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
3.4
<22年06月>
【ハラハラドキドキのエンタメ要素×実用的哲学的な映画。観て、楽しんで、考えさせられる】
・2019年公開のスペインのSFホラー映画。
・牢獄のような部屋が縦に数百も広がる、とある建物。その名も「VSC(自己管理垂直センター)」。中央は上下につながる空洞となっており、一日一回、その空洞の上から食事が運ばれる。ただし、一番上のものから順番に食べていき、残ったものだけが下に降りていくシステムのため、下の階層に行けば行くほど残飯または残飯すらない状態で階層の入れ替えが行われるタイミングまで暮らさなければならない過酷な仕組みの建物。主人公ゴレンは自らその中に入ることを志願。その中で半年間耐えれば、認定証が発行され外での暮らしが有利になることが目的。果たして無事に半年間を耐えることができるのか。一体、この建物の目的は何なのか。 という大枠ストーリー。

[お勧めのポイント]
〇不思議な設定でも納得の行く世界観
〇現実世界に対するわかりやすい揶揄(現実の社会について考えざるを得ない状況を作ってくれます)
〇知識少なくても宗教色が感じれるわかりやすい表現(調べたくなるきっかけを作ってくれます)

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〇不思議な設定でも納得の行く世界観
 ・そもそも、こんな不思議な設定を受け入れられるはずないだろう…と思って鑑賞しました。いやいや、きちんと受け入れられちゃいました!理由は、VSC(自己管理垂直センター)という建物の名の通り、「皆が自身の欲望を管理できて、皆で協力するように行動すれば、この難局も乗り越えられるはず!なのにそうはなっていない…」という社会の縮図のような状況を収容者に体験させることで何らかの目的を遂行しようとしている、そんな管理者の意図がほんのりと漂ってくるからです。それは、収容者に対して、事実を提示したいだけなのか、反発してほしいのか、ただこの有様に気づいてほしいのか、それに気づいて奮い立ってほしいのか、、、その目的は定かではありませんが、何らかの意図があることがビンビンと伝わってくる物語構成なので、この設定にリアリティを感じます。そのリアリティが共感を生み、どうなるの?!につながって、最後までじっと観てしまう。そんな「不思議な設定でも納得の行く世界観」でした。

〇現実世界に対するわかりやすい揶揄(現実の社会について考えざるを得ない状況を作ってくれます)
 ・みんなで協力して食料を分ければ餓死することもなければ食料を争って殺し合いも起きない、はずなのにそうはならない。そのためには1人1人全員が自分自身で客観的にそれを考え、判断する必要がある。誰か一人が考えることや行動を放棄すれば成り立たなくなってしまう。そんなこのVSCの中の世界ですが、これって現実社会でもいえることなのか…と感じざるを得ません。
 ・そんな現実社会をミニマムな世界で比喩的に表現することで、まるで揶揄されているような気持になりました。「ほうら、頭では理解できても、結局できないでしょ?だってあなた一人で行動したところで変わらないんだし。聞く耳持たない人ばっかだし。ね?」と。笑 特に、面接官だった女性が最初は「各々が秩序を保てばみんなで生き残れる」と希望を持っていたのに、後には主人公に対して「本なんてよく持ち込んだわね。こんな糞よりひどい世界に」と吐き捨てる。まるで、「どんな善人でも前向きな人でも必ず飲み込まれてしまう糞のような世界なんですよ(そちら鑑賞者の世界もね♡)」、と言われている気持ちになります💦
 ・がしかし、ただそれを受けて気持ち悪くなるのではないんです。各登場人物の視点や台詞、物語の終着を総合的に見ることで「じゃあ現実世界を生きる私たちはどうしていくべきなのか…」と、不思議と「前向き」に考えさせられているんですよね。素敵。映画を観なければ考えなかったはずのことに、きっかけを与えてくれる、そんな意義のある作品に思いました。

〇知識少なくても宗教色が感じれるわかりやすい表現(調べたくなるきっかけを作ってくれます)
 ・3や6の数字の話、リンゴ、血を飲むことで一体になる…キリスト教を訪仏させるギミックが沢山です。宗教に対する知識が薄くても「宗教的だ」と本能的に感じる演出です。これを感じるからこそ、「どういう意味があるんだ」と興味を持ち、調べる行動につながる。これもまた、意義のある作品の要素になっているのではないでしょうか。

[総じて…]
 ・映画[Cube]や[saw]のように限定的な空間で起こるパニック的な事柄にハラハラドキドキするエンタメ要素に加えて、現実社会に対して思考を巡らせたり、宗教を調べたりと、哲学的かつ実用的な部分も持ち合わせた観る意義がある映画に思いました。ありがとうございました。

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