とりそぼろ

プラットフォームのとりそぼろのレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
3.5
設定や込められたメッセージは非常に好き。ただ、それだけに少し矛盾やアラが目立つのがなんとも勿体無い感じ。今までに同様の手法を試した者はいないのか。そもそも設計の段階でこの問題が起きることは予想できなかったのか、階層移動の際にそれが可視化されているはずなのに対応されないのか。最下層から最上層に上がるのであれば、なぜそれを室内から目視できていなかったのか。これまで一つも食材が残らず割れた食器しか戻ってこなくともアクションを起こさなかった上層の者が、無傷のパンナコッタ如きでアクションを起こすのか。などなど疑問点が多々あった。

下層階まで食料が行き渡っていないことなどつゆも知らない、上階のシェフたちがとことんこだわり抜いて徹底的に管理して作った自己満足な料理を下層階の者たちは一切意に介さずたらふく食い荒らし、より汚くより不快な状態にしてさらなる下層階へと送り出す様。生きるために他者を縛り、犠牲にすることを厭わぬ者。上層階のものに擦り寄りたい、仲間に入れてもらおうとする者、それを見て上から嘲笑う者。ある時は下層にいた者がある時は上層へ、あるいはその逆も然り。その構造を設計・運用した者はそれが真に中の者のためになっていると信じ、自らがその立場となった時には深く絶望し自ら命を断つ者。革命を起こすために命を賭して分配・保護を行うも、最後には理想よりも目の前の現実を優先し他者に伝達を託し、祈る者。明確なオチを描かず、視聴者に委ねるラスト。

おそらくこれらに、この映画に込められた思い、メッセージ、風刺は数多く、大きく、社会構造や格差社会などの分かりやすいものの他にもたくさん込められているのだろう。
しかし、物語終盤でゴレンが「伝達が届いてくれますように」と届くかも分からない祈りをすることしかできなかったように、制作者がどれだけの想いを込めて本作を作ったかなど私にはさっぱり分からず、表層的なことしか見ることができていない。

もしもこの映画が現実を映す鏡なのだとしたら私は今どの階層にいて、何をすべきなのだろうか。考えれば考えるほど分からなくなった。
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