ぴんゆか

プラットフォームのぴんゆかのレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
3.5
SFサイコスリラーといった感じの作品。賛否両論あると思われる。個人的には星新一の作品が好きなのでのめり込んで見ることができたが、近未来に起こりそうな奇妙な世界観が苦手な人にはおすすめしない。
テーマとしては極限の状態においても人は私欲に制限をかけて他者の為に行動することができるのかという疑問が投げかけられていると感じた。これに対する答えは限りなくNOに近いと言える。というのも動物の本能としては生命維持が第一優先であり、生き延びて次世代にバトンを渡すことが生き物としての本質にあるからだ。
しかしながら人間と動物との違いは弱肉強食では測れない多様性を保って守っていくことにあるだろうし、その上で弱者に手を差し伸べ、全ての人が可能な限り平等であることは確かに価値があると言える。
この点において、この作品は非常に皮肉的であり、"うまく"機能しているように見える資本主義大国諸国の風刺であると感じた。
上の階層の者が下の階層の者へ他者への貢献を求めるシーンは、まさしくコロナ渦において大多数の顔も知らない民衆にSNSにてその豪勢な自宅から自粛を呼びかける世界的なハリウッドスター達という図と何ら変わらないものだ。
あらためて自分達の生活は顔も知らない大多数の困窮する人々の上に、彼らの犠牲の上になっているということを痛感せざるをえない。
構成としては、最下層とされる階が333であったこと、度重なる神を信じるか否かという問いかけなど、未だにヨーロッパの中でもキリスト教への信仰が厚いスペインの背景を鑑みると現実味があった。エンディングは海外特有の、視聴者の解釈に依拠するいわゆるスッキリしないものだが、現実世界ではこれより大きなスケールで数々の課題が山積みであることを考えるとこれでもまだ救いのある世界と思える気がした。
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