ShinMakita

グライド・イン・ブルーのShinMakitaのレビュー・感想・評価

グライド・イン・ブルー(1973年製作の映画)
3.1
☆mixi過去レビュー転載計画(ノンジャンル編)
…ここ10年で購入したDVD.Blu-rayのレビューです。



〈story〉
アリゾナの田舎町。白バイ警官のジョンは、退屈な日々を送っている。来る日も来る日も、スピード違反のキップ切り/違法車両の取締りの連続で、何の代わり映えもない。相棒のジッパーは、そんな生活でもいいと諦めて、俺の夢はゴテゴテに飾り付けた<エレクトラグライド>に乗る事だ、と嘯いている。もちろんそんなカネは無いから、あくまで<夢>なのだ。しかしジョンには現実的な夢がある。それは殺人課の刑事になることだ。テンガロンハットにスーツで、格好良く頭脳労働・・・というのに憧れていたのだ。

ある日、ジョンとジッパーは砂漠で錯乱していた老人ウィリーを保護した。ウィリーは、「友達のフランクが死んじまった!」と叫ぶばかり。気になった二人がフランクの住む小屋に行ってみると・・・そこには、脚にショットガンをククリつけ、胸部を自ら射抜いたフランクの死体が転がっていた。検屍官が到着し、自殺と断定するなか、ジョンは一人異を唱える。自殺するのに胸を撃つ奴はいない。これは殺人だ、自殺を偽装したんだ、と主張。誰も耳を貸さなかったが、臨場したベテラン殺人課刑事ハーブは違った。すぐに埋葬しようとした検屍官の手を止め、解剖を指示したのである。その結果、胸部の銃創は死後つけられたもので、しかも体内に22口径弾が残っている事が判ったのだ。ハーブはジョンの優秀さを買い、この事件の補佐として刑事に昇格させるのだった。

念願の刑事として、ハーブと共に捜査に当たることになったジョン。フランクの身辺を洗うと、彼が若い麻薬密売人とつるみ、5000ドルほど貯め込んでいたことが判る。そして小屋を調べたら、大量の麻薬が見つかった。これは麻薬がらみの殺人か?ハーブは管轄内で最も大物の売人ゼムコに容疑をかけ、その行方を追う。ジョンもその捜査に同行するが、その過程で、ヒッピーたちに尋問する際にハーブが必要以上の暴力を振るうのを見て、違和感を覚えるのだった。そして夜、ハーブが「俺のオンナ」としてジョンに紹介したのが酒場の女主人ジョリーンだったことで、ジョンは気まずい思いをしてしまう。ジョリーンは実は、ジョンのセフレだったのだ。これが露見し、ハーブはジョンに悪態をつく。矮小なハーブの本性を見たジョン・・・翌日からまた、元の白バイ警官に戻ってしまう。

またいつもの取締りの日々・・・が、ある日、暴走族を追っかけている最中、そのカシラがあのゼムコであることにジョンは気付いた。スピードを上げ、必死でゼムコを追跡するジョン。そしてとうとう、無傷でゼムコを逮捕することに成功した。連行され、ハーブの尋問を受けるゼムコ。所持金は4000ドル近くある。ハーブは、ゼムコをフランク殺しのホシと決めつけ厳しく問い詰める。このカネはフランクを殺して奪ったのだろうと。しかしゼムコは頑強に否認。その姿をみて、またジョンは違和感に襲われる。ゼムコはシロなんじゃないだろうか・・・そう思い始めた時、彼の脳裏に真犯人の名が自然と浮かび上がってきた。



➖➖➖
マイナーながらも、アメリカンニューシネマの代表的映画です。これは一人の白バイ警官の、いやコウモリの悲劇。つまり、<体制側>にも<反体制側>にも弾かれてしまった男の物語なんです。

ジョンは、体制側の人間として、何の疑問も持たず憧れの刑事を目指していました。しかし、いざ本当に刑事になってみると、先輩刑事の頑迷さ/偏狭さに苛立ちを覚えるようになります。体制側に幻滅し、次第に<反体制>に傾いていくんですね。そこで「ゼムコ無実」という仮説から再スタートし、真実を導き出して行くのです。そこで終わりかと思いきや・・・彼には<反体制>からの思いがけない報復が待ち受けていたのでした。あの切なすぎるラストの長回しに、絶望以外の感想はありません。
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