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多動力 THE MOVIEのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

多動力 THE MOVIE(2019年製作の映画)
1.1
【君たちは、原液広げる側だということに気づいた方が良い】
先週、初めて『邦キチ!映子さん』を読みました。『邦キチ!映子さん』とは服部昇大による日本映画紹介漫画で、柳下毅一郎同様、邦画の深淵を覗きに行くスタイルの映画紹介を行なっています。さて、どんな映画をプレゼンテーションしてくれるのだろう?と読んでみたところ、『多動力 THE MOVIE』という耳馴染みのない映画が紹介されていました。しかも、この作品2019年の作品だと言うのです。『多動力』といえば、ホリエモンこと堀江貴文のベストセラービジネス書。それが実写映画化したのだそうだ。

そして服部昇大によれば、ビジネス書映画なんてジャンルがあるらしく『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの《マネジメント》を読んだら(以下、《もしドラ》と表記)』や『神様はバリにいる』が実写映画化されているということ。通常、ビジネス書映画といえば、『ヤバい経済学』や『21世紀の資本』とドキュメンタリーとして映画化されるものですがどう実写化していくのだろうか?『もしドラ』の場合、もはやドラッカー関係ない安いアイドル映画に成り下がっていました。
『多動力 THE MOVIE』はなんとAmazon Prime Videoで配信されており、Twitterで話題になるもFilmarksには全然感想がアップされず、アップされていたとしても「酷い」と書かれているだけで、どう地獄が展開されているのかがわからなかった。実際に観たところ、狂気の映画であった。そして柳下毅一郎が研究している、日本映画のアンダーグラウンドに潜む搾取の構図すら見えてくる作品でありました。

大学のキャリア系の授業で流される映像かなと思しき質感で、映画は進行する。大学の就活カウンセリングシーンへ映る。開幕早々遅刻してきたチャラ男2人と対峙するカウンセラー。一人は安定を目指して自動車業界へ行こうとしているのが明らかにされる。「毎日365日働きます!」と24時間戦えますか時代へ行こうとするブラック企業ウェルカム感を醸し出しています。一方、主人公であるもう一人のチャラ男・鈴木くんは、「ZUZUTOWN」にエントリーすると言い始める。カウンセラーは「入ったら月に行くの?」と煽りを入れる。そうです、明らかに《ZOZOTOWN》に入ろうとしているのです。そして、毒にも薬にもならない個人の哲学なき入社理由を披露し、カウンセリングはそこで終わってしまうのです。カウンセラーよ。何もしていないぞ。

こうして、ZUZUTOWNへ入社した鈴木くんですが、ZOZOTOWNから訴えられるぞ!と言いたくなるほどの、治安の悪いブラック企業っぷりが画面の中で余すことなく提示されていきます。社長の演説が始まると、従業員はかったるそうに立ち聞く。こともあろうことか、部長は《報・連・相》が分からないことが発覚する。仕事中に、スマホは弄るは、ペチャクチャどうでも良いおしゃべりをするは、終いには演説中にマスコットのストラップをグルグル振り回す人までいる。このことから会社の知能偏差値が異様に低いことが伺える。なるほど、トレンディドラマにありがちな雑然としたオフィスを再現しているようなのですが、これではただ単に治安が悪い企業にしか見えないし、いくらZOZOTOWNが世間の嘲笑に晒されているからって失礼な気がする。


さて、映画を観れば誰しもが違和感に気づくオフィス描写があります。それは、何故か存在感が大きすぎる鈴木くんのパソコンに貼られた《悪霊退散》のお札です。呪術的なものに頼るヤバい企業感を出したいのだろう。鈴木くんのPCには《悪霊退散》のお札が貼られているのですが、異様に目立つのです。

これは、オフィスの色合いが全体的に黒く、鈴木くんのファッションもそれに同化した色合いのスーツを着込んでいる為、画面の色彩とはかけ離れた色を放っているお札が強調されてしまっているのです。観客は、このお札がノイズとなって、全然鈴木くんのセリフが入ってきません。呪術的なものに頼るヤバい企業感は、社長・部長の演説や、オフィス後方に飾られている立派な鳥居で十分説得力があるので、お札は無くした方がいいのではと感じました。

他にも沢山言いたいことはあるが、それはブログに書きましたのでよかったらどうぞ。
【ネタバレ考察】『多動力 THE MOVIE』君たちは、原液広げる側だということに気づいた方が良い↓
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